がんの血液データ

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入院や外来にて必ず行う血液検査。

患者さんにも検査結果を手渡されますが、主治医から説明がないと全く分からないですよね。

医師によっては必要最低限の説明しかしないケース、口頭で説明されるだけで検査結果を開示されないケースと様々です。

もちろん専門家である医師の意見が重要ですが、自分の身体を理解するためにも、自分で多少は理解しておく事が重要だと思います。

ここでは臓器別に血液検査データの異常値の解釈について説明します。

がんの血液データの見方

一般的血液検査項目

アルブミン(Alb)

基準値:6.7-8.3 g/dL

栄養をみる指標として用いられます。食事量が少ないと、栄養不良となりアルブミンは低値を示します。また、アルブミンは肝機能で作られため、肝機能が低下していても、アルブミン値は低くなります。アルブミンやアルブミンを含む総蛋白が血液内に少なくなると、全身が浮腫みます。栄養を十分に保つ事と、全身の水分をコントロールするために、アルブミンは基準値内にあることが望ましいです。病態により誤差はありますが、アルブミンが2.0を下回る場合、アルブミン製剤の輸血が行われます。

CRP

基準値:0.3mg/dL以下

主に炎症の指標になります。あくまでも、身体のどこかで炎症を24時間以内に起きている事が分かるのみで、部位の特定まではできません。

point
アルブミンとCRPを組み合わせたmGPS(Glasgow Prognostic Score)が、がん患者に起こるがん悪液質の病態を反映する指標となります。
低アルブミン(3.5g/mL未満)+高CRP(0.5mg/dL以上)の場合、悪液質状態であると判断できます。一方、高CRP(0.5mg/dL以上)のみ場合は、前悪液質状態と捉えられます。mGPSを把握することで、早期支持栄養療法介入を必要とするか否かを判断できます。

AST

基準値:13-33 IU/L

肝臓の細胞に多く含まれる酵素で、基準値より高い場合は肝機能が低下していると考えられます。

ALT

基準値:男8-42 IU/L, 女:6-27 IU/L

ASTと同様に、肝臓の細胞に多く含まれる酵素で、基準値より高い場合は肝機能が低下していると考えられます。

AST/ALT比

ASTがALTより高い場合は、肝硬変、肝臓がんが疑われます。

γ-GTP

基準値:10-47 IU/L

アルコール性肝障害の指標として用いられます。また、胆汁の流れが悪い場合もγ-GTPの値は上昇します。

point
抗がん剤の多くは、肝臓で代謝されます。そのため、抗がん剤を長く服用していると、ASTやALTの値が上昇してきます。肝機能障害がある場合、充分量の抗がん剤を投与する事ができません。肝機能障害が進行してしまうと、肝臓の入り口である門脈が亢進し、全身浮腫や腹水がたまります。また、肝性脳症といって脳機能に影響を及ぼす事もあります。肝機能はがん治療を行う上でとても重要な指標なので、定期的に確認するようにしてください。

ALP(アルカリホスファターゼ)

基準値:115-359 IU/L

胆道や肝臓、小腸、骨の細胞に含まれる酵素です。ALP単独で上昇している場合、異常がないこともあります。がん患者さんでALPが高い場合に疑うのは、骨転移です。骨細胞にもALPは含まれている事から、骨転移の進行と比例して、ALPが上昇していきます。骨転移はどのがんにも起こり得ます。気づきにくい上に、とてもリスクがあります。

LDH(乳酸脱水素酵素)

基準値:119-229 IU/L

肝臓、赤血球、筋肉、悪性腫瘍に多くあり、高値の場合はこれらの病気を疑います。LDHはがんの指標でもあり、特に悪性リンパ腫と白血病で上がりやすいです。「LDH=がん」ではありませんが、スクリーニングとして用いる事ができます。

総ビリルビン

基準値:0.2~1.2 mg/dL

ビリルビンは赤血球から作られ、肝臓から胆汁として排泄されます。
ビリルビンは肝臓がん、胆管がんの指標にもなります。血中ビリルビンが高くなると、黄疸が表れます。皮膚や眼球が黄色になる閉そく性黄疸です。ビリルビンが高いと肝性脳症も疑われます。

CK

基準値:男性 62-287 IU/L、女性 45-163 IU/L

骨格筋や心臓の筋肉に多く含まれる酵素で、心臓に障害があると高い値となります。

CK-MB

基準値:5.2 以下 ng/ml

急性心筋梗塞などの診断に使われる。

クレアチニン(Cr)

基準値:男性 0.6-1.1 mg/dl、女性 0.4-0.7 mg/dl

筋肉に含まれる成分で、老廃物として腎臓でろ過され、尿として排泄される。血中のクレアチニンが高い場合、腎機能の障害が疑われます。

BUN(尿素窒素)

基準値:8-22 mg/dl

蛋白質は肝臓で尿素に変えられ、腎臓から尿中に排泄されます。BUNが高いと、腎機能の低下が疑われます。

point
シスプラチンなどの白金製剤は、腎機能障害を起こす事がわかっています。また、骨転移がある場合、ビスホスホネート製剤による治療が十分に行えないこともあります。腎機能は経過的に確認しておく必要があります。




尿酸(UA)

基準値:男性:3.0~7.0、女性:2.6~6.5

運動したり臓器を動かすプリン体が肝臓で分解されて尿酸となり、尿や便として排泄されます。尿酸が高いと痛風や腎機能低下、尿路結石を起こします。

AMY(アミラーゼ)

基準値:20-100 IU/L

糖類を分解する酵素で、膵臓や唾液腺に多く含まれる酵素です。膵臓癌の場合はアミラーゼんが高値になる事がありますが、血中アミラーゼのみで膵臓癌を判断することは難しいです。超音波検査やCTなどの画像診断と組み合わせて判断されます。

空腹時血糖(Glu)

基準値;空腹時69-104mg/dL

グリコヘモグロビン(HbA1c)

基準値:6.0%未満

ヘモグロビンとブドウ糖が結合したもので、血糖値が高くなると増加します。1-2か月前の血糖値を反映します。

point
空腹時血糖とHbA1cは糖尿病の診断に用いられます。糖尿病とがんの関係はとても強いです。糖尿病の方はがんになるリスクが4倍とも言われます。私が病院で行った調査でも、がんと診断された方の5割は糖尿病もしくは高血糖の方でした。糖質は外から摂取しますが、摂りすぎるとがん細胞の増殖を助ける可能性があります。血糖値、HbA1cが高い方は、注意が必要です。


HDL-C

基準値:35.3-79.5 mg/dL

善玉コレステロールと呼ばれ、動脈硬化を防ぎます。

LDL-C

基準値:70-139mg/dL

悪玉コレステロールと呼ばれ、動脈硬化の危険因子です。

point
コレステロールとがんの関係については多くの議論がなされています。悪玉であるLDLが高いと動脈硬化のリスクが高くなりますが、反対にLDLが低いとがんに罹るリスクが高くなるとも言われます。LDLはホルモン合成に重要であり、LDLが低いと神経系、免疫系を低下させるため、がんになりやすいと考えられています。一番良いのは、基準値内に収まっている事です。

Na (ナトリウム)

基準値:138-146 mEq/L

ナトリウムは細胞外に多く存在し、細胞の浸透圧調整に重要です。低ナトリウム血症になると、動作反応が遅くなり、錯乱などが起こる事も。原因は脱水や腎不全、水分の摂りすぎなどです。がんと低ナトリウム血症は深い関係があります。抗利尿ホルモン分泌異常やがん性疼痛によるストレス、抗がん剤と併用する輸液量の過剰によって、低ナトリウム血症になります。

Cl(クロール)

基準値:99-109 mEq/L

体内においてナトリウム濃度と並行して変化する電解質。クロールが欠乏すると、胃液量低下、肺気腫、肺炎が疑われる。過剰になると、水分欠乏や腎からの排泄障害が考えられる。

K(カリウム)

基準値:3.6-4.9 mEq/L

カリウムは細胞内内液中に存在し、細胞内外へ移行することで浸透圧や細胞の機能、神経、筋の興奮、心臓の筋肉に影響しています。カリウムが異常な値になると、知覚障害や意識障害、脱力、麻痺が起き、さらに重篤な場合は不整脈や心機能低下を起こします。

point
がん細胞内にもカリウムは存在しており、がん細胞は死滅する際に大量のカリウムを細胞外へ放出し、高濃度になったカリウムがT細胞の働きを阻害しているという報告もあります。
がん患者は電解質異常をきたしやすいです。抗がん剤による倦怠感や嘔気、嘔吐も電解質異常が関係しています。がん性疼痛やストレスによるホルモンバランス異常でも電解質のバランスは崩れてしまいます。電解質を整えることは、治療のベースを作ることにつながるので、電解質は血液検査で必ず確認します。

WBC(白血球)

基準値:男性 3.600-9.000 /mm、女性:3.000-7.800 /mm

体内で炎症や血液疾患があるときに上昇する。

RBC(赤血球)

基準値:男性 387-525万 /mm、女性:353-466万 /mm

酸素や炭酸ガスを全身へ運びます。貧血の程度を表します。

PLT(血小板)

基準値:13.8-30.9万/mm

出血した血液を固める働きがあります。

好中球

基準値:40-69%

白血球の一種で、最も多いのは好中球です。細菌から生体を守ります。

リンパ球

基準値:26-46%

白血球の一種。異物から生体を守ります。

単球

基準値:3-9%

白血球の一種。体内に侵入した病原体を貪食します。感染症や膠原病で増加します。

point
がんと血球は深い関係にあります。抗がん剤の副作用による血球の減少、血液がんによる血球減少、その他の血球異常が起こります。
まず、抗がん剤により骨髄抑制(赤血球、白血球、血小板をつくる骨髄の機能が低下した状態)となり、血球が減少します。抗がん剤の種類により異なりますが、およそ1週間以内に白血球、赤血球、血小板の値が低下し、10日後に低値がピークとなります。抗がん剤の単回投与では2-3週間かけて回復してきます。骨髄抑制による一時的な血球減少の場合は良いのですが、長期間血球が減少する場合には、薬剤投与や輸血などの治療が行われます。血球が高度に減少している場合、治療の中断を余儀なくされます。血液のがんによる血球減少もあります。血液がんは白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫に大きく分けられます。血球の変動も複雑で、一概には述べられませんので、「血液がん」のページを作成して述べたいと思います。その他、血球が減少するケースとして、すべての血球が減少する再生不良貧血や、その他骨髄異形成症候群、巨赤芽球性貧血、血球貪食症候群などを稀に合併していることもあります。

血球が減少すると何がいけないのか。
白血球が減少すると、感染を起こしやすくなり、身体の抵抗性が落ちるので、治りにくいです。赤血球が低下すると貧血になり酸素を全身に運べず、全身の機能が低下します。血小板が低下すると出血時に血液を固める事ができず、貧血、失血状態となり危険です。




Dダイマー(D-dimer)

基準値:Dダイマー…1.0μg/ml以下、FDP…15μg/ml (ラテックス凝集法)

出血がフィブリンにより止血された後、凝固した血栓を溶かす酵素の産物を測定する。

Point
高値だと播種性血管内凝固症候群(DIC)やトルーソー症候群が疑われます。血小板検査との違いは、「出血⇒止血⇒分解」の過程におけてどの段階を反映しているかが重要です。血小板が高値だと、血液凝固が起こりやすい状態(リスク)と考えます。一方、Dダイマーが高値だと、すでに血液凝固が起こり、分解されているが処理できない状態と考えます。つまり血管梗塞が疑われます。

亜鉛(Zn)

基準値:80~130µg/dL未満(2018年に変更された)

亜鉛が低値になると、味覚障害、骨粗鬆症などが起こります。⇒がんと亜鉛不足

血液データと運動療法

がんリハビリテーションでは、以下の場合は運動療法を行えないとしています。
血液データより確認できる項目のみ載せています。

ヘモグロビン7.5g/dL以下  ←貧血傾向のため、運動を控える

血小板 5万/μ以下        ←転倒や傷害により出血が止まらないリスクが高い

白血球 3000/μ以下     ←感染のリスクあり

高カリウム血症        ←意識障害などのリスクが高い

高カルシウム血症       ←骨転移のリスク、心負荷をかけられない

低ナトリウム血症       ←錯乱など危険

がんリハの運動療法について


血液データまとめ

一般的な血液データについてまとめました。

血液データは治療方針を決めるために必要な検査項目です。

患者さん自身もある程度把握しておくことが、自分の意思決定を助ける意味でも大事だと私は思います。

是非、この記事を参考にされて下さい。

復習として、ポイントだけ以下に載せておきます!

がんと赤血球、白血球、血小板 がんと血液凝固因子 がんと空腹時血糖とHbA1c がんとクレアチニンと尿素窒素 がんとナトリウムとカリウム がんとアルブミンとCRP がんとHDL-CとLDL-C 癌とASTとALT