がんの骨転移

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骨転移はがん患者の10‐20%に認められ、骨転移がある場合、病気Ⅳ期(進行がん)となります。

病的骨折や麻痺などの骨関連事象(Skeletal related events:SREs)により日常生活が著しく低下、化学療法が受けられなくなる場合もあり、予後に影響する可能性があります。

しかし、予測のしようがありません。

まず大事なのは、骨転移について知る(知識を得る)事だと思います。

骨転移

原発臓器別の骨転移発生頻度

骨転移を起こすと骨折しやすくなるのは間違い!?

がんが骨に転移すると、4つの特徴を持ちます。その特徴により、骨の脆さが変わってくるんです。

造骨型転移

がん細胞が骨を作る細胞を活性化(骨芽細胞の増殖)させることで、骨が異常に硬くなります。骨折は起こしにくいですが、骨が硬くなることで痛みを生じます。

溶骨型転移

がん細胞が骨を破壊する細胞を活性化(破骨細胞の増殖)させることで、骨が異常に脆くなり、骨折を起こしやすくなります。骨折による痛みが生じ、時には神経麻痺を起す事もあります。

混合型転移

増骨型と溶骨型の両方が点在している状態です。例えば、右骨盤は溶骨型が見られるが、左骨盤は造骨型がみられる場合は、混合型と判断されます。

骨梁間型転移

臨床的に見つかりにくく、一番多いのが骨梁間型です。骨シンチグラフィーでは不明瞭で発見しにくいです。播種性血管内症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)を引き起こす事があり、注意が必要です。

骨のバランス

破骨細胞と骨芽細胞

骨を脆くする破骨細胞の活性化と、骨を作る骨芽細胞の活性化は同時に行われており、シーソーのようにバランスをとりあっています。

しかし、がんが転移することで、このバランスが崩れてしまいます。

多くの場合、破骨細胞活性化につづき、転移巣局所で骨芽細胞による骨新生が同時に起こります。

そのため、X線上、局所に破骨細胞刺激の強い場合は溶骨性転移、骨形成が上回る場合は造骨性転移として認められます。

臓器別に見た骨転移発生頻度

発生臓器別に見た骨転移の発生

乳がん、前立腺がん、肺がんに骨転移が多くみられています。

骨転移の好発部位と症状

脊椎(39.3%)

脊髄神経の圧迫による症状が現れます。

頸椎6.5%
肩、腕、親指のしびれ、異常感覚
腕が上がらない、足に力がはいらない
おしっこが出にくい

胸椎12.9%
足に力が入らない、つま先を上げれない
胸あたりから上の触っている感覚が分からない
おしっこがでにくい
脇~お腹の痛み、締め付け感

腰椎16.4%
つま先から始まる足のしびれ、異常感覚(片側or両側)
おしっこが出にくい
足の力が入りにくい

仙骨3.5%
椅子に座った時のお尻の感覚が薄い
おしっこが出にくい

②大腿骨近位(18%)、骨盤(16.7%)

体重をかけた時に股関節が痛い
足を上げた時に痛む

③上腕骨

手をついたときに肩が痛む
手を上げた時に腕が痛む

骨転移により現れる骨関連事象

骨転移により現れる骨関連事象

骨転移とリハビリテーションを参照してください。

骨転移の検査方法

X線検査(レントゲン)

骨濃度の変化と骨皮質の変化、骨梁の異常を観察。溶骨性変化や造骨性変化の有無、病的骨折の有無を評価するのに用いられます。

CT検査

骨転移の診断に有用です。胸部・腹部の骨転移のスクリーニングに使用できます。検査時間も短く、患者さんへの負担も少ないです。

骨転移CT

MRI検査

MRI(T1,T2強調画像):最も鋭敏で骨内外の病変描写に有用。骨にほとんど破壊が無く、骨梁間に浸潤するような病変がみられる場合にはMRI出なければ評価できません。骨髄腫などでは骨粗鬆症と画像上の区別ができず、血液性化学・尿検査や組織検査で総合的に判断する必要があります。

骨転移MRI

骨シンチグラフィー

骨に集まる放射性薬剤を静脈投与したあと、放射性薬剤の集積程度を特殊なカメラ(ガンマカメラ)で撮像することにより、骨の代謝状況(骨吸収と骨形成)を調べる検査です。

骨シンチグラフィー

PET-CT

positron emission tomography (陽電子放出断層撮影) の略です。放射能を含む薬剤を用いた核医学検査の一種です。放射性薬剤を体内に投与し、その分析を特殊なカメラでとらえて画像化します。がん細胞は糖代謝で活動しており、PET-CTは糖が集積している場所をとらえることで、骨転移を判断します。

骨転移のPET-CT




殴打痛の確認

これは誰もが行える検査方法です。

スクリーニング検査となります。例えば脊柱を拳をグーにして叩きます。

叩く強さは、肩叩きをする位の、強すぎず、弱すぎずです。

殴打した際に、骨に痛みを感じる場合は、骨に何らかの異常がある可能性があります。

骨転移の治療

1.手術

病的骨折や転移性脊椎腫瘍による脊髄神経の圧迫がある場合には、手術を検討することがあります。

積極的に手術を検討されるのは、比較的予後が良好で、3カ月以上の余命が残っている場合となります。

脊椎骨転移の場合に問題となるのは、脊髄や神経の圧迫により日常生活が困難になることです。

手足の麻痺や排尿が困難になるリスクがある場合には、脊椎の前方固定術や後方固定術を行い、脊髄・神経の圧迫を除圧します。

大腿骨の骨転移で問題となるのは、太ももの骨が脆くなり骨折を起こす(病的骨折)ことです。

足の付け根に骨転移した場合は、人工骨頭置換術やγネイルが選択されます。

太もも(大腿骨骨幹部)では、随内釘による固定術が行われます。

手術が行われるのは、骨折が起こるリスクがある場合と骨折した後に整復する場合の2通りがあります。

大腿骨に骨転移が見つかったら、主治医と相談して今後の方針を話して下さい。

<手術に対するがんのガイドライン>

  • 長官骨病的骨折や切迫骨折症例に対して、内固定術を施工することにより疼痛は改善し、歩行能力やADLが改善するので、行うよう勧められる。(グレードB)
  • 脊椎転移症例に対しては、疼痛や麻痺の改善およびADL向上を目的に、脊柱の安定性や麻痺の状況を鑑みて、手術を考慮する事が勧められる。(グレードB)

2.放射線

骨転移に対する放射線の効果は大きく2つ挙げられます。
一つ目は痛みを和らげる(疼痛軽減)効果、二つ目は骨折を起こらないように骨を強くする(骨硬化)効果です。

疼痛軽減効果は、即効性がある場合が多いです。放射線治療も約2週間以内で終了します。

骨硬化効果は、遅発性の効果となります。そのため、放射線を初めて3カ月~半年間は、頸椎カラーや体幹コルセットで病的骨折を予防する必要があります。

詳しくは骨転移のリハビリテーションの項で解説します。☞骨転移のリハビリテーション

<がんのガイドライン>

  • 四肢の骨転移を有する患者に対して、手術と放射線療法の併用を行うと、疼痛が緩和しADLが向上するので、勧められる。(グレードB)
  • 脊髄圧迫を伴う脊椎転移を有する患者に対して、放射線療法を単独で行うことを考慮しても良いが、それにより、麻痺やADLが改善したとする十分な科学的根拠はない。(グレードC1)

3.薬剤

骨転移に対して薬剤による治療も骨折の予防や疼痛緩和に効果的です。注意してほしいのは、あくまでも骨転移による痛みの軽減や骨折の予防であって、腫瘍自体を攻撃するものではないという事です。

抗がん剤や分子標的薬などの治療と並行して行う事が望ましいです。また、即効性はなく、放射線治療と同様に病的骨折の予防が必要です。

骨転移に対する薬剤は、ゾメタ(商品名)とランマーク(商品名)が選択されます。これらは、骨粗鬆症に対する薬剤となっています。

ゾメタは3-4週間の間隔で点滴注射します。ランマークは4週間に1回皮下注射します。薬剤なので、まれに副作用があります。低カルシウム血症と顎の骨が脆くなることです。

<骨転移に対するがんのガイドライン>

  • 骨転移を有する患者に対して、ビスフォスフォネート製剤を使用すると、骨関連事象(SRE)の発生頻度は減少するとともに、その発生を遅らせるので、強く勧められる。(グレードA)

骨転移のリハビリテーション

骨転移を起こした場合、手術、放射線、薬剤と並行して理学療法士、作業療法士、言語聴覚士によるリハビリテーションが行われます。

がんのガイドラインにおいても、
脊椎転移症例に対して、リハビリテーションを実施する事によりADLやQOLの向上が得られるため、行うよう勧められる。(グレードB)というエビデンスが出ています。

がんリハビリテーションは日本で始まって10年と歴史が浅く、どの病院でも受けられるとは限りません。しかし、数年後には充実してくると予想されます。

骨転移のリハビリテーションについては、「がんのリハビリテーション」の項で詳しく解説しています。☞骨転移のリハビリテーション


骨転移まとめ

最初に言いましたが、骨転移はとても怖い病気です。

骨転移の怖い所は、常に続く痛みと脊髄を圧迫することで起こる麻痺です。

骨転移はすべての臓器がんで起こる可能性があります。

今後、骨転移の起こりやすい遺伝子が見つかる可能性はありますが、、、防ぐ術は現在の医学ではありません。

定期的な検査のみです。自分の身は自分で守るが鉄則です。定期的な検査を自ら主治医へお願いしてください。