造血器腫瘍(血液のがん)の病態と治療

シェアする

水泳選手の池江選手が急性白血病を公表し、闘病中です。現在は退院して外来通院されているようですが、不安を抱えながら生活されている事だと思います。まさに白血病は血液のがんです。この記事では血液のがんである急性白血病、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫について述べていきます。基本的な内容になっていますので、復習になると思います。

造血器腫瘍(血液のがん)

血液の中には赤血球や白血球、血小板などが存在しています。これら血液細胞は、多能性造血幹細胞より作られています。赤血球、白血球、血小板は全て同じ祖先というイメージです。

幹細胞といえば、京都大学の山中教授がiPS細胞を作成し、ノーベル賞を取りました。あれも多能性幹細胞というもので、多能性造血幹細胞に似ていますね。

話を戻しますが、造血器腫瘍とは多能性造血幹細胞から血液細胞へ分化するどこかの段階において異常クローンが発生し無失序に増殖していく疾患です。

臨床数が多く、代表的な造血器腫瘍は白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫です。

急性白血病

病態

造血幹細胞から血液細胞へ分化する過程の未熟な細胞が骨髄中で異常に、無失序に増殖し、正常な造血を阻害する病気です。病気になると貧血、血小板の減少、白血球の増加・減少を起こし、それに伴う症状で発見されやすいです。他の臓器に転移する確率は低いですが、治療をしないと数週間~数ヵ月以内に死亡します。
急性白血病は「急性骨髄性白血病」と「急性リンパ性白血病」に分けられます。

治療

急性白血病は抗がん剤の感受性が高く、完全寛解を目指した強力な多剤併用療法が繰り返し行われます。その際、白血球(主に好中球)が減少するため、感染予防対策として治療は無菌室で行われます。
以前、「世界の中心で愛を叫ぶ」というドラマと映画がありましたね。大ヒットとなり、公開された年の骨髄バンク登録者が過去最高になりました。そのシーンの中でも、白血病になったヒロインが無菌室で過ごす様子が描かれていました。
若年者であれば、骨髄移植も検討されます。骨髄移植については後述します。

悪性リンパ腫

病態

成熟したリンパ球または免疫担当細胞が腫瘍化し、増殖する病気です。リンパ腫細胞がリンパ節で増殖すると、無痛性のリンパ節腫大や肝脾腫が診断のきっかけとなります。リンパ節以外にも全身の各臓器にリンパ組織は存在するので、消化管、肝臓、鼻・鼻腔、皮膚、肺、中枢神経、甲状腺、乳腺、骨髄、腎臓などでリンパ腫が発生します。症状は発熱、体重減少、全身倦怠感などです。
悪性リンパ腫はホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に分けられ、日本人の90-95%は非ホジキンリンパ腫です。非ホジキンリンパ腫は種類が多く、悪性度により治療方針が異なります。

多発性骨髄腫

病態

B細胞より分化した形質細胞が腫瘍化し、骨髄中で増殖する病気です。腫瘍細胞が骨髄内で増殖するこtで、正常な造血作用が障害される症状と、腫瘍細胞が産生する異常な免疫グロブリン(M蛋白)が引き起こす症状があります。正常な造血作用が行い得ないことで、貧血や感染、出血傾向などの症状がみられます。サイトカインの分泌が破骨細胞を刺激し、病的骨折や腰痛、高カルシウム血症による意識消失が起こります。また、M蛋白が臓器に沈着することで、臓器障害(主に腎臓)が見られます。

治療

根治させることは困難なため、症状のコントロールによる延命が治療目標となります。65歳以下で移植適応の場合、プロテアソーム阻害剤(ボルテゾミブ、カーフィルゾミブ)や免疫調整薬(サリドマイド、レナリドマイド、ポマリドマイド)などを中心に、ステロイドやアルキル化薬(メルファラン、シクロフォスファミド)、HDAC阻害薬などを組み合わせた多剤療法を用いて寛解導入療法を行います。その後自家造血幹細胞移植併用大量化学療法(メルファラン使用)が行われます。

造血幹細胞移植(hematopoietic stem cell transplantation:HSCT)

抗がん剤や放射線治療は一定以上の投与量・投与線量に達すると、最大耐容量(maximum tolerated dose: MTD)となり、増量できなくなります。その原因は、ほとんどが骨髄抑制(血液細胞を作る機能が低下している状態)によるものです。抗がん剤や放射線治療だけでは根治困難なため、若年者や対象者では造血幹細胞移植が行われます。
造血幹細胞移植とは、異常な血液細胞を取り除き、正常な造血細胞と入れ替える治療で、一定の治療効果が得られています。しかし、非常にリスクが高い事も念頭において下さい。
造血幹細胞移植は、自分から自分に移植する自家造血幹細胞移植と、他人から自分に移植する同種造血幹細胞移植に分かれます。他人から移植する場合、白血球の血液型(HAL)を極力一致させる必要があります。HALが一致する確率は親族で25%、他人であれば0.0.1-0.1%と言われます。

HSCTの主な流れ

①:患者は約2週間前より移植前処置を行います。これは、患者の骨髄機能を、大量の抗がん剤と全身放射線治療により攻撃します。正常な血液細胞、異常な血液細胞を含めて体内に存在する全ての血液細胞を破壊し、根治を目指します。非常に強力な治療のため、吐気や脱毛の副作用に耐えながら、無菌室で治療に臨みます。

②:移植当日はドナーから採取した骨髄幹細胞を点滴で投与していきます。

③:移植後は食した骨髄幹細胞が正常な血液細胞を作り始めるまで、無菌室で過ごします。
目安は約2週間~4週間で、無事に血液細胞が増えてくれば、退院となります。

骨髄移植による症状

退院後100日以内に表れる急性移植片対宿主病(graft-versusu-host disease:GVHD)と100日以降に表れる慢性GVHDがあります。これは、ドナーリンパ球が宿主(移植された患者)で増殖し、自己破壊を起こす病気です。

急性GVHD :大量の下痢、下血、腹痛など
慢性GVHD :口腔内乾燥、皮膚の色素沈着、閉塞性肺疾患、腎臓病など

GVHDの症状は個人差がありますが、骨髄移植をした方のほとんどが経験します。そのため、免疫抑制剤による治療が併用されます。

*生殖器について

放射線により男性の精巣機能、女性の卵巣機能が失われます。若年者で今後子どもを望まれる男性は、精子を凍結保存しておきましょう。女性も受精卵の凍結保存が可能です。

がんリハビリテーション

移植後は体調に合わせてリハビリテーションを行う施設が増えています。目的は、寝たきりによる筋力や体力の低下を防ぎ、退院後にスムーズに日常生活を送れるように支援することです。詳しくは血液がんのリハビリテーションで述べたいと思います。

造血器腫瘍(血液がん)まとめ

血液細胞を作る造血機能が、がん化する病気です。
主に悪性リンパ腫、急性白血病、多発性骨髄腫があり、治療方法はそれぞれ異なります。
治療は分子標的薬治療や造血幹細胞移植が主流です。