肝臓がんのリハビリ

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肝臓がんのがんリハビリテーション

がんリハビリテーションでは、肝臓がんの患者を担当することがあります。

肝臓がんのがんリハビリテーションを行う上で把握すべき事は、肝臓の機能について知る事です。

がんリハビリテーションを担当する理学療法士、作業療法士、言語聴覚士は、内臓の機能に比較的疎いです。

心臓や肺に関しては、専門的に勉強します。

しかし、肝臓や胆嚢、大腸、小腸は養成校でも解剖学、生理学で勉強する程度です。

肝臓は代謝機能や解毒機能など生体にとって、とても重要な器官です。

肝臓がんの基礎についてはこちら☞【肝臓がんの基礎知識】

がんリハビリの阻害因子

肝臓がん、もしくは肝転移にて腫瘍が進行し、肝機能が障害されると、がんリハビリテーション継続が困難になります。

肝臓がん進行による症状とリスクは以下の通りです。

1. 黄疸による疲労感
2. 肝性脳症による意識障害
3. アンモニア血症による不穏
4. 腹水貯留に伴う活動性低下
5. エネルギー代謝の機能低下
6. 血小板減少によるリスク

肝臓がんの症例

70代男性
2年前から肝腫瘍疑われていたが放置されていた。お腹の張りにより調子悪くなり、かかりつけ医を受診した所、肝内胆管がん、腹部リンパ節転移と診断された。抗がん剤治療を開始したが、腎障害が進行し、抗がん剤中止となった。高度腎障害となり透析導入を検討中であった。今回、水様便、食欲低下、両下肢浮腫となり当院入院。お腹の浮腫み(腹水)も溜まってきており、自宅でも動けなくなっていた。
持病として20年前から2型糖尿病(服薬コントロール中)。

評価

入院した時は寝たきりの状態で、日常生活も全て介助が必要。(BI:10点)

認知面は良好で、コミュニケーションも正常。

寝たまま足を天井に向かってあげる事は難しい(SLR運動困難)が、膝立ては可能。

上肢機能は正常であり、食事はベッドギャッジして何とか自分で行っている。

排尿はバルーン留置、排便はおむつ排泄。

主治医の治療方針

肝内胆管がんのステージⅣであり、腎障害が重度である事から抗がん剤による治療は当院でも行わない予定。腹水も溜まっており、少し呼吸も苦しいとのこと。対処療法として、KM-CARTを行う予定だが、またすぐに腹水がたまる可能性は高い。今以上に低アルブミンとなれば、輸血も行う。本人と家族は最期を自宅で迎えたいと望んでおり、どのような状態で退院とするか、考えていく。

本人・家族の意向
本人:早く退院したい。ビールを飲みたい。
家族:主治医より治療ができないと言われました。昔からお酒が好きで毎日飲んでいました。主人には病気の事は伝えていません。最期まで好きなお酒を飲ませてあげたいです。

血液データの考察

本症例の血液データ

総蛋白、アルブミン、A/Gが低値であり、栄養状態が不良です。

肝機能の指標であるAST、ALTは低値であり、一見、肝機能障害がないように思えますが、それは大きな間違いです。

肝機能障害が重度になると、肝臓の酵素が産生されず、AST、ALTは低値となっています。

尿素窒素とクレアチニンが高値、尿検査で尿蛋白(2+)である事から腎臓の障害が起こっています。

肝機能が障害されているため、血小板も少し低値です。

腹水とKM-CART

本症例における腹水の原因

本症例の腹水の原因

本症例は、肝内胆管がんの浸潤に伴う肝機能低下と門脈圧亢進、腎不全による排尿障害、腹部リンパ節転移によるうっ滞が原因で腹水となっています。がん治療は行わない方針であり、肝機能も末期で、腎不全まで併発していることから、今後腹水の改善は困難と考えられます。しかし、腹水を一時的に抜くことで、本人の今感じている苦しみを軽減することはできます。

入院より3日後に腹水を抜くKM-CART実施。

*KM-CARTとは?こちらで確認。(準備中)

KM-CART前後の比較

KM-CART前の腹部

KN-CART前の腹部

KM-CART後の腹部

KM-CART後の腹部

KM-CART後の腹部

腹部最大周計116.5cm → 93.0cm。
お腹が張ってきつい → お腹がだいぶ楽になったよ。

KM-CART後にリハビリテーションの処方あり。

主治医から、「筋力、体力が低下しており、自分で起きるのが難しくなっているので、離床を促してほしい」と指示がでた。

理学療法士の思考

本症例は肝内胆管がん、腹部リンパ節転移、低アルブミン、排尿障害により腹水が溜まっている。

肝内胆管がんと腹部リンパ節転移は保存療法だが、低アルブミンと排尿障害は薬剤治療により多少なり軽快していくと考えられる。

アルブミンは栄養の指標であり、今後筋力をつけていくためには、アルブミン値の改善は必要である。

排尿障害による下肢の浮腫があると、筋力が発揮しずらいため、運動する障害になりかねない。

低アルブミンと排尿障害の改善により、運動療法の効果が高まると考えた。

今回、KM-CART施行後に身体を起こすことになる。

身体を起こすと上半身の血流が下半身に移動するため、低血圧になる可能性もある。

特に本症例の場合、寝たきりの期間が長かったため心臓の機能、筋肉のポンプ機能(心臓に血液を戻す力)が低下している。

身体を起こす際には、血圧の確認と意識レベルの確認は絶対必要である。

理学療法の実際

理学療法1日目(KM-CART実施から2日後)

端座位訓練

臥床(横になっている)血圧107/60mmHg→端座位(腰掛ける)血圧90/35mmHgへ低下するも、会話は正常に可能。端座位は10分程度行う。その際、血圧が低下しないように、足首の運動を実施した。

座位訓練

理学療法5日目(KM-CART実施から6日後)

平行棒を使った立ち上がり

端座位になった時の血圧も安定し、端座位時間も延びてきたので、リハビリ室へ移動し平行棒での立ち上がり訓練を行った。立った後の血圧も100/50mmHgで安定していた。平行棒を歩こうとしたが、それは難しかった。

立ち上がり訓練

肝臓がんのリハビリまとめ

肝臓はエネルギーの貯蔵や解毒作用があり、がん化するとそれらの機能が低下します。

障害が進むと腹水や肝性脳症のリスクが高まり、日常生活を困難にさせます。

肝臓がんのリハビリテーションでは、それらの進行を遅延させ、ADLを維持させることを目的としています。