リンパ浮腫はがんととても関係の深い疾患です。リンパ浮腫になると外見が変わります。さらに重症化すると、日常生活へ影響を及ぼします。ここではリンパ浮腫について説明していきます。
リンパ浮腫
リンパとは、体内に張り巡らされたリンパ管と、その途中にある豆のような形のリンパ節で構成されています。そのリンパ管にがんの浸潤やリンパ節への転移、機械的刺激(手術を含む)などの理由で腕や脚が浮腫みが現れます。それをリンパ浮腫と呼びます。
リンパ浮腫の原因は特定されやすいです。特に乳がんや子宮がんなどの手術を受けている方の半数はリンパ浮腫を発症すると言われています。ここではリンパ浮腫の基礎知識を抑えていきます。
リンパ浮腫の原因
手術によるリンパ節郭清(乳がん、子宮がん、前立腺がん)
がんの手術では、腫瘍組織に加えてその周辺にあるリンパ節を切除することがあります。これは、がんの転移を考慮して行われます。リンパ節は電車で例えると駅です。様々な線路のを通って電車(リンパ液)が駅(リンパ節)を出入りします。その駅が無くなれば、電車が停滞します。そのため、浮腫みが生じてしまいます。
がんの浸潤に伴うリンパ節閉塞、リンパ節転移
がん細胞が転移するルートは血管とリンパ管です。血管内を流れる血液を通って転移することを血行性転移、リンパ管内を流れるリンパ液を通って転移することをリンパ性転移と呼びます。リンパ節転移とはリンパ性転移の場合に、がん細胞は一旦リンパ節へ運ばれ、そこで転移性腫瘍を形成する転移のことです。リンパ節が腫瘍により閉塞することで、浮腫みが生じます。
放射線照射
放射線治療の副作用としてリンパ浮腫が出現することがあります。がん細胞へ放射線を照射した際に、周囲の正常組織やリンパ節の機能低下を起こします。それが原因で、リンパ浮腫が出現することがあります。
リンパ浮腫の症状
リンパ浮腫が出現する時期は個人差があります。術後すぐにリンパ浮腫となる方もいれば、数年後、10年後にリンパ浮腫となる方もいます。
早期の症状
腕や脚の軽いむくみ
腕や脚の静脈がみえにくくなる
腕や脚が疲れやすい(片方のみ)
軽度~中等度の症状
腕や脚の目に見えて分かるむくみ
皮膚をつまんだときにしわが寄りやすい
腕や脚がうごかしにくい
腕や脚の静脈が左右異なる
重症化した症状
腕や脚のむくみの左右差
腕や脚など浮腫んだ箇所のだるさを感じる
腕や脚の静脈が見えない
皮膚変化(硬くなる or 軟くなる)
皮膚の皮質がはがれやすい
リンパ浮腫の合併症
蜂窩織炎
蜂窩織炎の原因は細菌感染によるものです。
リンパ浮腫では皮膚の下にタンパクと水分が貯留しており、細菌が入ると増殖します。
そこで炎症が起こり、蜂窩織炎の症状が起こります。
その特徴は、皮膚が赤い、熱いです。
治療は抗菌薬を投与しながら浮腫んでいる腕また脚を挙上することです。
深部静脈血栓症
特に下肢のリンパ浮腫で合併しやすいです。
原因は、活動量の低下と循環不全にあります。
下肢のリンパ浮腫になるとだるさ等から活動量が低下します。
そのため下肢の静脈血が心臓へ戻る力が弱くなり、静脈内で血栓を形成されやすくなります。
また、長時間の座位姿勢をとる(新幹線やバスの移動)事で下肢の循環不全となり、深部静脈血栓症を合併します。
深部静脈血栓症を合併しても、元々リンパ浮腫があると見た目では気づきにくいです。
治療は抗血栓療法が行われます。
血栓を薬で溶かし、肺や心臓、脳への転移を抑える治療です。
リンパ管炎
レンサ球菌やブドウ球菌などの細菌感染が原因でリンパ管内で炎症をおこし、感染がリンパ節へ伸びていく症状です。
感染した脚や腕の皮膚に赤みと圧痛を伴う不規則な筋(すじ)が出現します。
全身症状として、発熱、悪寒、頻脈、頭痛を伴うこともあります。治療は抗菌薬の投与になります。
リンパ浮腫の確認
基本的に、左右差を確認します。まずチェックして欲しいのは、以下の2点です、
- 静脈の見え方
- 皮膚の厚み
日常生活で気を付ける事
むくみに早期に気づく
日頃から、手足の周径を図ることが奨められていますが、腕などは難しいと思います。家族の協力が必要です。
スキンケアを行う
患側(浮腫んでいる側)の皮膚が乾燥しないように、保湿クリームや軟膏をこまめに塗布します。
足指は蒸れやすいので、通気性の良い靴下や靴をはき、汗をふくようにしましょう。
身体を洗う時は柔らかい素材のスポンジから、素手で優しく洗います。
石けんは弱酸性の肌に優しいものを選んでください。
日常生活上の注意点を守る
前立腺がんや卵巣がんの術後や放射線治療後の方は、下肢を挙上して寝るようにしましょう。
また、長時間同じ姿勢をとらないようにして下さい。特に長時間の座位や立位は避けて下さい。
乳がんの術後や放射線治療後の方は、重たい荷物を持つことは出来るだけ避けましょう。
上述したように、細菌感染には注意が必要です。不意に患肢をケガしたり、蚊に刺されたりすると、蜂窩織炎の原因となります。
ムダ毛処理のカミソリで傷つけたという例もありますので注意してください。
太り過ぎに注意
肥満(皮下脂肪)はリンパ節を圧迫します。
運動を行う
リンパ浮腫になると動かさないことが一番だと思われている方も多いです。
しかし、リンパ浮腫に対しては積極的に運動を行うべきだと言われています。
筋力増強訓練は、筋肉のポンプ作用を強くし、結果的にリンパ液の流れを良くします。
弾性包帯などで圧迫した状態で行うと、より効果的です。
リンパ浮腫の治療
用手的リンパマッサージ
圧迫療法
圧迫した状態での運動
別のページで述べていきます(coming soon)
リンパ浮腫まとめ
リンパ浮腫の原因は外科手術、がんの浸潤と転移、放射線治療など様々です。
合併症として蜂窩織炎や深部静脈血栓症、リンパ管炎があります。
予防するためには日常生活の注意を守ることが重要です。
また、運動は禁忌と思われがちですが、積極的に行うことが推奨されています。