前立腺がんの基礎

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国立がんセンターの報告では、2014年の前立腺罹患数はがん罹患数の4番目ですが、死亡率が多いがん罹患部位は6番目となっています。

2015年、2016年の前立腺癌罹患数は男性がんの第一位となっています。

2017年の報告では、およそ75人に1人の割合で罹患します。

しかし、前立腺がんの生涯がん死亡リスクはわずか1%です。

進行が遅く、比較的治療経過が良好ながんが、前立腺がんです。

前立腺がん

前立腺の早期発見

健診でも49歳以下ではオプション(+2000円位)で行える、PSA(前立腺特異抗原)検査が有効です。

泌尿器科学会は40歳代から検査をするよう促しています。

50歳以上では市町村の健診にPSA検査が盛り込まれている(ハズ)です。

これは血液検査になります。

前立腺がんの場合、初期では無症状なので、腫瘍マーカーが上昇していると、前立腺がん疑いと診断され、病院での精密な検査が行われます。

病院では健診結果を基に、直腸診と再度PSA検査、そして、MRI(T2強調画像、拡散強調画像にダイナミック造影検査を加えたmultiparametric MRI)が行われます。

MRIの目的は、前立腺癌の検出率を上げる事、生検の必要性を検討する事です。

前立腺がんの確定診断には、前立腺生検が必要です。

前立腺生検

方法
経直腸的超音波ガイド下系統的前立腺生検(TRUS-guided SB)としては、標準的な6 カ所に辺縁領域外側4 〜6 カ所を加えた計10 〜12 カ所の生検が推奨されています。しかし、前立腺体積が大きい方の場合は、生検本数を増やす事もあります。もちろん、局所麻酔を使用します。方法は主に2通りあり、経直腸アプローチ(経直腸生検)と、経会陰アプローチ(経会陰生検)が行われます。

合併症
生検後の入院率は0.5-7%と低いですが、入院が必要になる方の約70%は感染症による発熱です。次いで、出血約20%、排尿障害約10%となります。感染症:大腸菌の耐性菌による発熱、敗血症など
血尿:軽症だが、発生率は4-66%。
直腸出血:軽症だが、発生率は1-37%
血精液症:高齢者での発生率はとても低い。
排尿障害:一過性の症状が大半。
勃起障害:一時的な症状。心理的要因もおおきい。
これらをふまえ、予防的抗菌薬の投与が行われます。

PSA(前立腺特異抗原)検査

PSAカットオフ値は、4.0ng/mLです。
年齢別にみていくと、
50-64歳:3.0 ng/mL
65-69歳:3.5 ng/mL
70歳以上:4.0ng/mL

*男性型脱毛症治療薬として市販されているフェナステリド(プロペシア錠)とデゥタステリド(ザガーロカプセル)を服用している方は、血清PSA値を低下させるので注意が必要とされています。他に、前立腺肥大症治療薬のデュタステリドやステロイド性抗アンドロゲン薬である酢酸クロルマジノンやアリルエストレノールも血清PSA値を低下させるので注意が必要です。

前立腺がんの分類とステージ

ABCD分類

前立腺がんのABCD分類

前立腺がんのTMN分類

前立腺がんのTNM分類

前立腺がんのTNM分類2

前立腺がんのステージ

前立腺がんのステージ

前立腺がんの症状

  • 排尿困難
  • 排尿時の痛み
  • 血尿や血精症

前立腺は膀胱を囲むように存在します(図)。そのため、前立腺がんが大きくなると、尿道を圧迫し、排尿や疼痛が出現します。

前立腺癌の治療

監視療法・待機療法

前立腺癌は、進行が遅いことから、早期に発見されてもすぐに手術適応とならない場合があります。定期的にPSA検査と前立腺生検を行う監視療法になることがあります。
早期前立腺癌に対して実施された監視療法と即時根治療法(手術)をの無作為化比較対照試験(randomized controlled trial;RCT)で検討した所、監視療法では長期の経過で転移発生率はやや増加する可能性は否定できない。しかし、生命予後に対する影響は根治療法と差はないものと考えられています。
また、高齢であることや合併症が出現していることから治療を行わず、ホルモン療法を中心に緩和的治療を行う方法も選択されます。それは待機療法(待機遅延内分泌療法)と呼ばれます。

手術療法

前立腺全摘除術(RP)
開放手術(小切開手術を含む)
腹腔鏡下前立腺全摘除術(LRP)
ロボット支援前立腺全摘除術(RALP)
前立腺癌の状態や患者さんの状態、主治医の得意な施術方法により、術式は変わります。現在ではロボット支援前立腺全摘除術が大半を占めており、術後の経過も良好です。

術後合併症

・尿失禁(postoperative urinary incontinence:PUI)

尿失禁の予測因子として、高齢、高度肥満、併存症の存在、術前勃起能低下、膜様部尿道長が短いこと、あるいは尿道体積や尿道形態等の尿道解剖あるいは尿道機能低下、術前排尿筋過活動の存在や膀胱コンプライアンス低下等の膀胱因子等の関与が考えられています。

また、尿道括約筋の温存、神経の温存ができれば、尿失禁の合併症が軽減できたという報告もあるようです。

・勃起不全(erectile dusfunction:ED)

術後発症し、徐々に回復していきますが、その期間は個人差があります。

・鼠径ヘルニア

RRP 後では10.0 – 24.0%、LRP 後では5.3 – 14.0%、RALP でも14.0 -19.4%に発症するとの報告があります。

前立腺がんの合併症

前立腺がんで一番怖いのは 骨転移を起こす事 です。

前立腺がん、肺がんは骨転移を起こしやすいがんです。

骨転移を起こすと、骨の疼痛や骨が潰れることによる神経障害が出現し、日常生活を行うことが困難となります。

骨転移に関してはこちらを読まれてください☞骨転移の病態とリスク




前立腺がんまとめ

前立腺がんは進行が遅く、前立腺がんが原因で亡くなる方もわずか1%です。

しかし、進行して前立腺がんが見つかると、骨転移などの合併症で日常生活が困難になります。

そのため、検診などでの早期発見が重要です。早期発見されても待機療法で様子をみるケースもあります。

主治医と治療方針を話し合うことが重要です。

参考文献
前立腺がん検診ガイドライン2018年版。日本泌尿器科学会。