がんと栄養はとても密接な関係にあります。がんになると、食事・栄養が大事と耳にタコが出来るほど言われます。そうは言われても、身体がついていきません。
この記事では、がんと栄養について理解を深め、納得した上で食事を摂ってもらうきっかけになってほしいと思います。
がんの手術と栄養
胃がん摘出術
胃がん摘出術(開腹術)は、胃がん全摘出術と幽門側胃切除術の2つが代表的です。
幽門側胃切除術は胃が残存している分、後遺症は少ないですが、何かしらの症状は起こってきます。
胃がん術後に起こる事
食物の通過速度が速くなる
口から入った食物は、唾液、胃液、膵液、腸液などの消化液により分解されながら、最終的に便として排出されます。胃では一旦食物を貯め込み、お粥くらいにまで食物を分解します。胃で貯め込む事で、次に送られる十二指腸へ準備期間を与えます。ここで行われる胃の作用が無くなると、固形状の食べ物が食道からすぐに十二指腸へ到達します。この減少を「ダンピング」と呼びます。
食後の不快感がある
「ダンピング」による症状です。ダンピングには早期ダンピング症候群と後期ダンピング症候群があります。
後期ダンピング(食後2-3時間)
食欲が減退する
胃を切除することで食欲が落ちる原因は、ホルモンにありました。胃は食欲を調整するグレリンというホルモンを分泌しており、胃を切除することでこのグレリンの分泌も減少します。胃全摘出術は術後3-7日間に約12%まで低下するようです。胃の術後に食欲が起きる原因は、気持ちやメンタルではなく、ホルモンにあるようです。
体重が減少する
ホルモン分泌の減少により食欲が低下すれば、食事量も低下するので体重が減少します。胃全摘出では術前体重の約20%、部分切除でも体重の約10%減少するようです。
胃摘出術後の食事・栄養
ダンピング症候群を抑える食べ方
- 軟らかくて消化の良いものを食べる
- よく噛んで、ゆっくり食べる
- 食事中の水分は控える
- 食事の回数を分ける(主食3回、副食2回)
- 単純炭水化物を短時間で摂らない
- 食後すぐの運動は避ける
- 食後2時間をめどにとうぶうにゃ炭水化物を補給
おススメの食べ物
食事に注意が必要なのは、術後3カ月です。この間は、消化の良いものを摂取するように気を付けます。
おススメの食べ物
- 白身魚、卵、豆腐、食物繊維の少ない野菜などです。
控える食べ物
- っこい料理:てんぷら、ラーメン
- 脂肪の多い料理:バラ肉、ベーコン
- 消化のよくない魚介類:貝類、イカ、タコ
- 繊維の多い野菜:ごぼう、レンコン
- 炭酸飲料・アルコール
- 濃いお茶やコーヒー
- 海草・香辛料
食道がん摘出術
食道がんの手術はがん外科手術の中でも侵襲が大きく、術後後遺症が大きいです。食べ物を飲み込むための機能が損なわれるため、食事が困難になります。
食道がん術後の症状
食道がん術後の食事・栄養
- ゆっくり食べる
- 麺類は避ける
- ビールや炭酸飲料は避ける
- 水分は一気に飲まない
- 焼き肉、刺身、海藻は注意
大腸がん術後の症状
術後の食事の注意点
- 一度にたくさん食べない
- 腹八分を心掛ける
- 食物繊維の野菜は控える
- 発酵しやすい食品に注意
- 規則正しい食事パターンを作る
- 軽い運動を行い消化吸収を促進させよう
術後の食事まとめ
胃がん術後、食道がん術後、大腸がん術後の食事についてまとめました。3つの術後の食事の注意で共通していることは、よく噛む、脂質を控える、食物繊維の野菜を避ける、炭酸飲料は飲まない事です。
参考文献
笹子三津留. もっと知ってほしいがんと栄養のこと.2013.