ハイパーサーミアという温熱がん治療をご存知でしょうか。
ハイパーサーミアは保険診療の認められた、がん治療です。
がんを温熱で倒す治療で、最古のがん治療法でもあります。
近年、その技術も進歩し、がん治療として保険適応されるまでに至っているのです。にも関わらず、認知が低いです。
その理由は?
ハイパーサーミアの効果と治療代などについて、まとめました。
ハイパーサーミア
がん治療のハイパーサーミア
がん細胞は43℃以上(約1時間)で死滅することが明らかになっています。
高温の温熱を与えると、正常な細胞まで傷つけてしまうのではないかと思われます。
がん組織の血管は硬いため血管が拡張せず、熱を放散できません。
そのためがん細胞は温度が上昇しやすい特徴を利用し、正常細胞を破壊することなくがん細胞だけを選択的に温熱します。
また、放射線治療や抗がん剤との併用による効果も報告されています。
適応は脳と眼球以外となっています。
また、人工関節などの金属やペースメーカーを装着されていると、治療できません。
1回の治療時間は50分くらいです。
ハイパーサーミアの歴史
1983年:サーモトロンRF8の試作機完成
1984年:日本ハイパーサーミア学会誕生
1984年:サーモトロンRF8が医療機器として正式採用
1990年:山本ビニター社の電磁波加温装置「サーモトロンRF8」が高度先進医療から健康保険の適応へ。但し、放射線治療との併用の場合にのみ保険適応。
その後、ハイパーサーミア単独のみ実施でも保険適応となる。
ハイパーサーミアの効果
熱ショック蛋白(HSP)発現による抗腫瘍効果
43℃以上の温熱に弱いがんに対する抗腫瘍効果
マイルドな温度(41-42℃)刺激による血管拡張効果
低用量抗がん剤+ハイパーサーミア
ハイパーサーミアは抗がん剤と組み合わせることが有効とされています。
それはハイパーサーミア学会でも共通の認識となっており、その効果を疑う医師は少ないです。
機序としては、ハイパーサーミア治療によってがん組織の血管が拡張し、血流が増加します。
すると抗がん剤がよりがん血管(腫瘍血管)へ多く届けられるため、抗腫瘍効果が増大すると考えられています。
通常量の抗がん剤+ハイパーサーミアを行うと、抗腫瘍効果はさらに高まりますが、身体にかかる負担は計り知れないです。
低用量抗がん剤のメリットは、副作用が少ない事です。
低用量は、抗がん剤通常量の1/3~1/4で、通常量と同等の効果が得られることが分かっています。
ハイパーサーミアを受けている方の声
ハイパーサーミアの治療費
ハイパーサーミアは、保険適応で受けれる施設と、自由診療で行っている施設に分かれます。
その理由は、保険診療がとても安く、利益が上がらないからです。
ハイパーサーミアの機械は見ての通りとても大型で値段が高いです。
しかし、保険診療が算定できる(国に保険適応として申請できる)は、1人の患者さんにつき3カ月に1回、9万円です。
採算が合わないので、自由診療の施設が多いんです。
保険適応で受けられる施設の場合
3か月に1回9万円。保険適応なので、患者さんは3割負担となり、毎月1万円くらいとなります。
施設が国へ請求できるのは3カ月に1回なので、ハイパーサーミアをどの位のペースで受けられるかは施設が決める事ができます。
週1-週2回の施設が多いです。
自由診療で受けられる施設の場合
自由診療なので、施設が自由に値段を設定します。
よく見かけるのは、パック料金です。
「ハイパーサーミア+別の自由診療」で5万円など。
ハイパーサーミア単体だと、1回2万円が相場です。
お試し期間として最初の1カ月は保険適応、その後は自由診療という施設もありますね。
ハイパーサーミアの機器投資を回収するためには、かなり高額の料金を患者さんへ請求することになります。
自由診療で行っている施設のハイパーサーミアの料金はバラつきがあるので、施設へ確認が必要です。
ハイパーサーミアまとめ
ハイパーサーミアは保険適応のがん治療です。
しかし、診療報酬の低さから普及が進まず、受けられる病院は多くありません。
また、保険診療より自由診療で行っている病院も多いため、高額な医療費がかかってしまいます。
ハイパーサーミアの魅力は、低用量抗がん剤と併用する事による副作用が少ないことです。
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