がんと亜鉛不足

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現代人は亜鉛が不足していると言われます。たぶん、私もそうです。

亜鉛が大事だとテレビやネットでも言われますが、詳しい生理作用については理解していませんでした。

また、最近はがん疾患と亜鉛の関係についても研究が進んでいます。

この記事では、亜鉛の基礎とがんとの関わりについて、なるべく分かりやすいようにまとめました。

がんと亜鉛

前半は亜鉛について述べていきます。

亜鉛(Zn)

亜鉛は体内に約2000mg存在します。

そのほとんどがタンパク質などの高分子(大きい分子)と結合しており、主に骨格筋(60%)、骨(30%)、皮膚(8%)、肝臓(4-6%)、消化管・すい臓(2.8%)、その他(脳、腎臓、前立腺、眼)などに存在しています。

亜鉛は細胞内の亜鉛濃度により変化します。

亜鉛はアルブミンなどと結合した状態で存在していますが、体内で亜鉛が不足すると細胞内の小胞器官に蓄えられた亜鉛が細胞外へ運ばれます。

細胞と組織間で亜鉛を出し入れする役割が、亜鉛輸送体(ZIP、ZnT)なのです。

体内の亜鉛の動き

亜鉛の吸収経路

経口により摂取された亜鉛は腸管で約30%が吸収されます。

約70%は便として排泄されてしまうのです。発汗にも亜鉛が含まれています。

その吸収方法は濃度勾配を利用した受動輸送と、輸送体を利用した能動輸送がありますが、亜鉛輸送の大半は能動輸送により小腸へ輸送されます。

小腸へ輸送された亜鉛は粘膜で腸タンパクと結合し、血液へ送られます。

血液内で2/3はアルブミンと結合し細胞へ運ばれます。残りの1/3は(α2-マクロ)グロブリンと結合します。

亜鉛の代謝

*血漿タンパク質の60%はアルブミン。残りはグロブリンです。アルブミンは身体の水分バランスを保ったり、脂肪酸やホルモン、カルシウムなどを体中の様々な組織へ届けます。

【予備知識】

血液、血漿、血清の違い

亜鉛検査

  • 血清亜鉛値の低下
  • 血清アルカリホスファターゼ値の低下
  • 貧血

亜鉛の栄養状態を確認するには、血清亜鉛を測る血液検査が有効です。亜鉛は朝が高値、午後に低値になるので、日内変動に注意して下さい。

血清亜鉛基準値 :80-130μg/dL

亜鉛欠乏症   :60μg/dL

潜在性亜鉛欠乏症:60-80μg/dL

また、亜鉛が不足すると、アルカリホスファターゼの値も低くなります。

亜鉛は血液中で赤血球に多く含まれているので、亜鉛が不足すると貧血症状が現れます。

亜鉛の生理作用と欠乏症

亜鉛の生理作用

亜鉛の生理作用は多彩です。

  • 成長(特に身長)
  • 皮膚代謝
  • 生殖機能
  • 骨格の発育
  • 味覚の維持
  • 精神・行動への影響
  • 免疫機能

亜鉛は300種類以上の酵素活性に重要です。

細胞分裂や核酸の代謝に作用します。

私の知り合いで、子どもの伸長が伸びないと心配になり、小児科を受診したら亜鉛を飲むよう指導されました。

子どもの成長に亜鉛は不可欠です。

ジュースを多く飲む子どもは背が伸びないと言いますが、これは亜鉛の吸収を阻害していることが原因の一つだと考えられます。

最近は私の周りにも子宝に恵まれない夫婦が多くいます。

その大抵は男性の問題だったりするのですが、根底には亜鉛不足があると考えられます。

みな、亜鉛サプリを摂取しています。

免疫機能への関わりも大きいです。

上述したように、亜鉛はアルブミンとグロブリンに結合します。

グロブリンは免疫機能の要です。

免疫グロブリンはB細胞により産生される抗体で、体内に侵入した異物を排除する為に作られる抵抗物質です。

亜鉛不足になると免疫グロブリンの働きが弱体化してしまうと考えられます。

がんと免疫について詳しく知りたい方は免疫の仕組み・免疫を高める方法

亜鉛欠乏

亜鉛が欠乏すると、これらの症状や病気のリスクが表れます。

  • 味覚障害
  • 成長障害
  • 皮膚障害
  • 下痢
  • 脱毛
  • 免疫機能低下
  • 性腺機能低下
  • 神経機能低下
  • 創傷治癒力低下
  • 肝疾患リスク
  • 慢性腎不全リスク
  • 冠動脈疾患
  • 糖尿病
  • 貧血

がんと味覚障害について詳しく!




一日に必要な亜鉛

亜鉛の食事摂取基準を見ると、成人男性、女性は8mg/日です。

摂りすぎは貧血などを引き起こすので、上限量も知っておいて下さい。

耐容上限量は成人男性は45mg/日、成人女性は35mg/日です。

1日に必要な亜鉛摂取量

食べ物に含まれる亜鉛

亜鉛の含まれる食品一覧

牡蠣や豚レバーに多くの亜鉛が含まれています。

亜鉛は比較的熱に強いので、茹でても含有量は変わりません。

亜鉛の吸収は、一緒に摂取する食物中物質によって影響をうけます。

食物由来の食品(種子、米ぬか、小麦などの穀類、豆類)に多く含まれるフィチン酸は、亜鉛と非水溶性の複合体を作ることにより亜鉛の吸収を阻害します。

カルシウム、乳製品、食物繊維、コーヒー、オレンジジュースも亜鉛の吸収を妨げます

鉄分は亜鉛と一緒に摂るといけないとよく聞きますが、それは鉄剤の場合のみで、鉄を多く含む食材と一緒に摂取しても亜鉛の吸収量はさほど変わりません。

コーヒーは亜鉛の吸収を半分に落としてしまうので、食事前後のコーヒーは控えましょう。

亜鉛のようなミネラルの場合、動物性たんぱく質、ビタミンCやクエン酸、リンゴ酸の栄養素を一緒に摂取することで吸収率が上がると言われます。

抗がん剤と亜鉛

抗がん剤の副作用である味覚障害の原因として、亜鉛不足が指摘されています。

抗がん剤服用患者を対象として味覚障害と血清亜鉛の値を調査した論文においても、血清亜鉛が低値の場合に味覚障害が出現していました。

さらに、亜鉛は塩味感度と関連が深い事が明らかになっています。

また、抗がん剤投与により亜鉛不足になると思われがちですが、実は投与前から亜鉛が不足している患者も多いようです。

がん疾患と亜鉛

膵臓がん

アメリカ人を対象とした研究では、亜鉛摂取は膵臓癌のリスクを軽減できると言われています。膵臓の細胞には多くの亜鉛輸送体であるZIPが発現しています。膵臓細胞の亜鉛調節不全は、膵臓癌の進行に関係しています。

前立腺がん

また、前立腺には亜鉛輸送体が存在し、亜鉛も多く存在しています。亜鉛輸送体発現の減少による前立腺の亜鉛レベルの低下は、がん促進活性に繋がると言われます。

乳がん

亜鉛と乳がんの関係はマウス実験の報告が中心です。亜鉛は乳腺の成長と発達に重要な役割を果たしています。そのため、乳腺上皮細胞には亜鉛輸送体が多く発現しています。乳がんモデルマウスでは亜鉛輸送体の発現がコントロール群と比較して変化が認められています。詳しい内容は割愛しますが、今後亜鉛輸送体の遺伝子レベルを調べることで、抗がん剤治療効果の判定が行える可能性があります。

がんと亜鉛まとめ

前半は亜鉛の基礎知識、後半はがんとの関係について述べました。

亜鉛は現代人に不足しており、その原因は添加物を多く摂取する食生活の変化だと考えらえれます。

抗がん剤による亜鉛不足がもたらす味覚障害がありますが、そもそもの亜鉛不足も原因の一つです。

また、乳がん、膵臓がん、前立腺がんにおいて亜鉛との関係が研究により明らかになりつつあります。


参考文献

  • 児玉浩子. 亜鉛欠乏症の診療指針2018.一般社団法人日本臨床栄養学会発行.
  • 神戸大朋. 亜鉛代謝の必須分子として機能する亜鉛トランスポーター. 日衛誌68.pp92-102.2013.
  • 浅野早苗. 抗がん剤投与後の味覚変化と血清亜鉛値との関連. 広大保健学ジャーナル11(2).2013.
  • 猪飼篤. 巨大蛋白質α2-マクログロブリン. 蛋白質 核酸 酵素.Vol37(9).1992.
  • The association between dietary zinc intake and risk of pancreatic cancer: a meta-analysis.Li L et al. Biosci Rep. (2017)
  • The emerging role of zinc transporters in cellular homeostasis and cancer.Bafaro E et al. Signal Transduct Target Ther. (2017)