腫瘍マーカーの見方

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腫瘍マーカーは、腫瘍(がん)の存在により血中に増加する物質をさし、がんの重症度を表す指標として用いられます。

腫瘍マーカーの検査は毎回ではなく不定期です。

主治医がどのタイミングで腫瘍マーカーを検査するのか疑問に感じる方も多いでしょう。

その理由は、腫瘍マーカーの見方と診療報酬を理解すれば分かってきます。

腫瘍マーカーを理解するためには、専門的な知識が必要ですが、出来るだけ分かり易くまとめました。

腫瘍マーカー

腫瘍マーカーの役割

  1. がんの病気決定
  2. がんの組織型
  3. 手術や化学療法の完成度
  4. 再発がんの早期発見

腫瘍マーカーはがんの臨床で欠かせない存在です。

腫瘍マーカーは多くの種類があり、条件付き保険適応となっています。

しかし、腫瘍マーカーは健診などでの早期発見には向きません

その理由は、特異度と感度が低いからです。

そのため、腫瘍マーカーの検査は、がん患者(がんがある事が確実な患者)のみが保険適応となります。

特異度と感度、陽性的中率

特異度とは、“ 疾患がない人の内、何人が陰性と判断されるかの割合 ”

⇒特異度が高いとは、疾患のある人、無い人の双方が陰性となりやすい(陽性となりにくい)検査です。そのため、陽性になった場合、その病気である可能性が高いと判断できます。

感度とは、” 疾患が有る人の内、何人が陽性と判断されるかの割合 “

⇒感度が高いとは、疾患のある人、無い人の双方が陽性となりやすい(陰性となりにくい)検査です。そのため、陰性となった場合、病気の可能性が低いと判断されます。

以上のように特異度と感度が腫瘍マーカーの検査には必要となりますが、臨床で知りたいのは、腫瘍マーカーの陽性結果が、どれ位の確率で癌陽性を反映しているか ですよね。

その指標として、陽性的中率(PPV:positive predictive value)があります。

これ以上は混乱するので割愛しますが、

陽性的中率は どれ位の確率で癌陽性を反映しているか とここでは理解してください。

腫瘍マーカーの保険点数

保険適応の腫瘍マーカー一覧①

保険適応の腫瘍マーカー一覧②

腫瘍マーカーを測定することで病院・診療所は診療報酬を算定できます。

しかし、それには様々な条件があります。

例えば、

「AとBを両方測定しないと算定できない」、

「乳がんにはAを測定した場合しか算定できない」、

「腫瘍マーカーは月1回のみ算定可能」     などです。

腫瘍マーカーを通院時に毎回測らない理由は、診療報酬上の理由とも言えます。




疾患別の腫瘍マーカー

臓器別腫瘍マーカー早見表

大腸がん

CEA(癌胎児性抗原)基準値:5.0 g/mL以下

CA19-9       基準値:35.0U/mL以下

大腸がんの陽性率と進行度の関係

CEAは癌の進行度、浸潤度、転移の有無に比例して高値化します。

大腸癌Dukesの分類とCEA陽性率は相関します。

*CEAは大量喫煙、肝硬変、糖尿病、高齢者で高値となるので注意!

*CA19-9は消化器がん全般で高値となるので注意!

肝臓がん

PIVKAⅡ 基準値:40mAU/ml以下(固相型EIA法)

AFP    基準値:20ng/ml以下(RIA固相法)

肝細胞癌の陽性率と進行度の関係

原発性肝細胞がん(HCC)の特異度が高いのは、PIVKAⅡとAFPです。

PIVKAⅡはステージⅣで100%の陽性率ですが、ステージⅠでは0%となります。

一方、AFPはステージⅣこそ100%ですが、ステージⅠでも40%の陽性率となります。

両者は互いに依存していないため、両者を比較することで、肝臓がんの診断効率が上昇します。

なにより、両者を同時に測定しないと、保険適応となりません。

また、転移性肝がんでは、CEAが高い感度を示します。

*AFPは慢性肝炎、肝硬変、妊婦の場合に高値となるので注意!

肺がん

CEA   基準値:5.0 g/mL以下

SSC   基準値:1.5ng/ml以下

SLX   基準値:38.0U/ml以下

CYFRA 基準値:2.0ng/ml以下(IRMA法)

NSE   基準値:10ng/ml以下(RIA法)

肺癌の陽性率と進行度の関係

肺がんの腫瘍マーカーの有用性は、画像診断に劣ります。

肺がんで腫瘍マーカーを測る意義は、がんのステージ推定と組織型の推定、経過観察のモニターです。

乳がん

CA15-3        基準値:25.0 U/mL以下

CEA             基準値:5.0 g/mL以下

BCA255       基準値:160 U/mL以下

NCC-ST-439 基準値:7 U/mL以下

乳癌の陽性率と進行度の関係

乳がんの腫瘍マーカーはステージⅠだと陽性率が低く、早期発見には役立ちません。

ステージが進行した段階で、測定されます。

CEAの測定により触知不能乳がん(To乳癌)を発見することができます。

膵臓がん・胆道がん

CA19-9 基準値:37.0 U/mL以下

膵臓がんのCA19-9は、ステージⅠでも陽性率77%と高く、CA19-9は発見困難な膵臓がんを見つける方法の一つです。

胆道がんのCA19-9はステージⅢでこそ70%を越えますが、ステージⅠの初期には反映されないため、早期発見には向きません。

また、胆石症の陽性率も20%ほどあるため、画像診断と組み合わせて評価することが重要です。

卵巣がん

CA125 基準値:35.0 U/mL以下

子宮頚がん

CA125 基準値:35.0 U/mL以下

SSC   基準値:1.5ng/ml以下

CA602 基準値:63 U/mL以下

子宮頚部がんは扁平上皮癌が90%であるため、まずSSC抗原を検査します。

残りの10%は腺癌となり、CA125を測定します。

しかし、子宮頚がんの腫瘍マーカー陽性率は、ステージⅠで40%以下であるため、スクリーニング、早期発見としての意義は少ないです。

また、子宮体がんのステージⅠにおける陽性率は30%以下であり、計測意義はほとんどありません。

*SCCは皮膚疾患でも高値となるので注意!

*CA125は子宮内膜症、月経、腹膜炎、妊娠、肝硬変で高値となるので注意!

前立腺がん

PSA 基準値:4.0 g/mL以下

前立腺がん=PSAと思われているほど、前立腺がんを特異的に測れるのはPSAです。

転移性骨腫瘍(がんの骨転移)

I-CTP 基準値:4.5ng/ml未満

ほぼすべての臓器がん

TPA 基準値:125U/ml以下(RIA法)




腫瘍マーカーの問題点

① 一般的に、初期の段階における感度が低く、スクリーニング検査には適しません。

② 腫瘍マーカーの値が正常になっても、がんが消失したとは言えません。

③ 偽陽性、偽陰性に注意が必要であり、検査の解釈には専門的知識が必要です。

④ 腫瘍マーカーの測定には診療報酬上の制限があります。

腫瘍マーカーまとめ

腫瘍マーカー測定は癌の進行度を反映でき、必要な不可欠な検査です。

しかし、診療報酬上、何度も検査できません。

特異度と感度が低いので、早期発見の検査には向かない腫瘍マーカーが多いです。

がんが確定している患者の経過を知るために用いられます。


参考文献
1.腫瘍マーカーの見方.ガイドライン2005/2006. 第三章.
2.熊川 良則. 肝細胞癌の早期発見と腫瘍マーカー. 広島市医師会だより. 第606号. 2016.
3.小林 浩. 腫瘍マーカー. 日産婦誌59巻(4). 2007.