腹水・KM-CART

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腹水濾過濃縮再静注法(KM-CART)を知っていますか。

肝臓がん、胆管がん、肝転移、腹膜播種が原因で、お腹に水が溜まります(腹水)。

腹水が溜まると起き上がりや立ち上がりが困難になり、胃と腸が圧迫されて食欲も低下する、深刻な症状です。

対策として利尿剤を処方されますが、利尿剤で体内の水分を排出できない場合、KM-CARTが行われます。

そのKM-CARTについて、まとめました。


腹水とKM-CART

腹水とは、何らかの原因により胃や腸を包む腹腔内に貯留した体液を言います。

腹水が貯留すると、腹部の膨満感や呼吸が苦しいといった症状がでてきます。

お腹に力が入りにくくなり、起き上がるのも辛くなります。

KN-CART前の腹部

がんに関連する腹水の原因

  • がん細胞から産生される増殖因子による腹膜の血管新生や血管透過性亢進
  • 肝転移や合併した肝硬変による門脈圧亢進
  • がんによるリンパ管閉塞
  • 腹膜播種による腹腔内の液体産生
  • アルブミン低下による血管透過性亢進

腹水の治療

利尿剤

スピロノラクトン(アルダクトン)やフロセミド(ラシックス)といった利尿剤が併用されます。

しかし、腹膜播種が原因の腹水では、効果が薄いと言われます。

アルブミン投与

腹水や浮腫のがん患者は、血中アルブミン値が低いです。

肝臓でアルブミンを産生できない、食事が入らずアルブミンが産生されないなど原因は様々です。

血中のアルブミン値が低いと、血管内の水分は血管外へ移動し、尿として排泄しにくくなります。

その結果、体内に水分が貯留し、浮腫や腹水が改善しにくくなります。

アルブミンを静脈血から輸血することで、血中アルブミン値を上昇させ、血管内へ水分を移動させる事を目的に行われます。

KM-CART

詳しく述べていきます。


KM-CART

お腹に溜まった腹水を抜き、アルブミンや電解質のみを体内へ静脈から戻す治療です。

適用

  • 胸水貯留
  • 難治性腹水
  • 肝性腹水
  • 癌性腹水

禁忌

  • 腹水または胸水中に、エンドトキシンが検出された方
  • 骨髄移植後などにおける免疫不全患者

注意点

  • 腹部(または胸部)の穿刺部より少量の出血を伴います。
  • 穿刺部へ局所麻酔を行いますが、麻酔が切れた後に痛みが残ります(個人差あり)      ⇒ドレーンを抜いたら、痛みは治まります。
  • 血中ビリルビン10mg/dL以上、溶血(+)だと、KM-CART実施できません。

診療報酬

腹水濾過器、濃縮再静注用濃縮器 65,300円

胸水・腹水濾過濃縮再静注法   49,900円

合計115200円の3割負担です。

算定は初回、それ以降は2週間空けて実施した場合に算定可能です。

なので、前回実施から2週間以内に行った場合、自費負担(115200円)となります。

民間の保険支払い

腹水濾過濃縮再静注法は、支払対象外の会社が多いです。

診療報酬が発生しますので、保険会社へ訪ねてみて下さい。

方法

医師が腹部穿刺を行い、腹水をパックへ抜いていきます。(多い人は10L以上抜ける事も。)

腹水の抜ける量が減ったら、体位を変えて、更に腹水が抜けないか確認します。

ある程度抜けてしまったら、パックを回収し、濾過装置へかけます。

腹水濾過器で腹水を濾過し、アルブミン、グロブリン、電解質のみを回収します。

その後濃縮器で腹水を濃縮させ、生理食塩水と混ぜて静脈へ戻します。

KM-CART

KM-CARTについて詳しく

利尿剤やアルブミン投与で改善が見られない場合、腹部を穿刺し水分を体外へ漏出させる事があります。腹水内にはアルブミンも多く含まれており、腹水を抜く事で体内のアルブミンも失います。低アルブミンは腹水を助長してしまうため、悪循環と成りえます。そのため、抜いた腹水を濃縮させ、アルブミンを点滴静脈から体内へ戻すCART(腹水濾過濃縮再静注法)という方法が生まれました。しかし、多くの問題点が残っていました。腹水を最初に処理する濾過膜が血液透析システムと同様に内圧濾過方式(腹水をファイバーの内腔に押し込み、外腔に向かって濾過する方式)であることです。細胞成分の少ない肝性腹水では問題が少ないものの、癌細胞や白血球、フィブリンなどの細胞成分の多い癌性腹水では、狭いファイバー内腔に詰まるために2リットル前後で膜閉塞を生じて以後の腹水処理が不能となります。特に粘液成分の多い卵巣癌ではより早期に膜閉塞を生じるために適応外とされていました。また、腹水をローラーポンプで機械的に圧挫することに加えて、無理に濾過処理を続けようと濾過圧をあげると腹水に過度な圧ストレスがかかります。そのため白血球からインターロイキンなどの炎症物質生じ、さらに濃縮膜にて濃縮されて点滴静注されるために高熱を引き起こす原因となります。そのためCARTには癌性の腹水には適応できませんでした。
そこで、松崎圭祐先生が考案したKM-CARTという方法が主流となりました。CARTの抱える問題点を改善し、濃縮時間も短縮され、適応も広がりました。もちろん、癌性の腹水の方でも利用可能です。

KM-CART後の反応

・お腹が張って苦しかったのが、嘘のように楽になった

・自分で起き上がれるようになった

・食欲がでてきた

・呼吸が苦しかったけど、楽になった

・全身のだるさが消えました

・両足の腫れもひきました

*胸水は、腹水ほどすっきりした感覚はないです。

KM-CARTの問題点

・保険適応は2週間空けなければ、2回目が行えない

・1回の施行で5-10Lの水分を排出するため、心臓に負担が大きい(血圧低下のリスク)

・腹水は再び貯留する(根本的治療ではないため)

・血性腹水の場合、貧血となる恐れがあるため行えない事もある

・まれに発熱もある


まとめ

腹水は肝臓がんや胆管がんで見られますが、腹膜播種が原因になることもあります。

第一に利尿剤で体内の水分を除去する治療が行われますが、改善しない場合はKM-CARTで腹水を抜き、濃縮されたアルブミンなどを体内へ戻します。

KM-CARTは2週間に1回のみ保険適応となります。

KM-CARTが受けられる病院は、KM-CART研究会を参考にして下さい。http://www.fukusui-cart.com/special/index.asp?id=4738