癌とビタミン

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ビタミンは細胞の働きを補助するために必要な有機化合物の総称です。

ビタミンの研究は戦時中が盛んであり、多くの働きが解明されています。

しかし、癌とビタミンの関係については研究が進んでおらず、ビタミンが身体に良いというイメージだけが先行しています。

ビタミンは身体に必要ですが、過剰摂取は癌を発生させるリスクが確認されています。

主要なビタミンと癌の関係について、論文を参考にまとめました。

癌とビタミン

脂溶性ビタミンと水溶性ビタミン

脂溶性と水溶性ビタミン脂溶性ビタミン

  • 水にとけないため体内に蓄えられる
  • 熱に強い
  • 脂質が酸敗すると破壊される
  • 鉱物油と一緒にすると吸収されにくい
  • 脂質、胆汁と一緒の場合に吸収が良い

水溶性ビタミン

  • 体内に貯蔵されずに尿として排泄される
  • 熱に弱い
  • 温めると容易に水に溶けだす

ビタミンの作用と食事

ビタミンの作用と食事一覧(PDF)

ビタミンは体内で生成されないビタミンも存在し、食事からバランス良く摂取することが大事です。

食事からビタミンを摂取すれば、摂り過ぎることはありませんが、偏った食事は注意が必要です。




癌とビタミン

癌とビタミン

癌とビタミンをまとめました。

サプリによるビタミンの過剰摂取は癌のリスクを高めてしまう可能性があります。

それでは、ビタミンを一つずつ見て行きましょう!

ビタミンA

役割と作用

  • ステロイド・ホルモン様の作用
  • 糖蛋白の生成
  • 上皮組織の分化と機能維持・
  • 骨の成長
  • 網膜における光受容反応

ビタミンAは脂溶性、耐熱性のビタミンで、酸化、乾燥で破壊されやすい。

消化管からの吸収には胆汁が必要である。

体内に取り込まれた後のビタミンAの運搬と移動には亜鉛が必要で、最終的にその90%が肝臓に貯蓄されます。

またビタミンA は酸化、過酸化で破壊され、これはビタミンE により保護されます。

癌とビタミンA

乳がんを対象とした研究のレビューでは、βカロテンとの関連は認められたが、ビタミンAと生存率に有意な関連はなかった。

肝臓がんとビタミンAの関連は認められなかった。

ヒトに対してレチノイド(ビタミンA)が癌の予防や治療に有効であると認められています。

その機序として、レチノイドは細胞の核に到達すると遺伝子の発現を調整し、正常な分化を維持することで発癌を抑制する機構が考えられています。

急性骨髄性白血病にビタミンA誘導体を投与すると、白血病細胞を減少させる分化誘導法もあります。

  • He J. Vitamin A and Breast Cancer Survival: A Systematic Review and Meta-analysis. Clin Breast Cancer.18(6).2018.
  • He J, Gu Y, Zhang S. Vitamin A and Breast Cancer Survival: A Systematic Review and Meta-analysis. Clin Breast Cancer. 18(6). 2018
  • 糸川嘉則.代替医療としてのビタミン・ミネラル. 日本補完代替医療学会誌1(1). 2004.

ビタミンD

役割と作用

  • 骨・歯の発育と維持
  • 小腸におけるカルシウム、リンの吸収
  • 腎尿細管におけるカルシウム、リンの再吸収
  • 一部遺伝子の発現抑制
  • 細胞分化と免疫機能に関与

癌とビタミンD

ビタミンDは紫外線に曝露されることで皮下脂肪から合成されます。

肝臓で代謝されて25OHDとなり、さらに腎臓で活性化されて1,25HDになります。

25OHDの数値が高い方が、癌の再発が少ないという報告もあります。

  • 浦島充佳. ビタミンDの多彩な効用. ビタミン91.
  • Urashima M, Effect of vitamin D supplementation on relapse-free survival among patients with digestive tract cancers: The AMATERASU Randomized Clinical Trial. JAMA. 321(14). 2019.

ビタミンE

役割と作用

  • 細胞膜の安定化(容血予防)
  • 生体内抗酸化作用

癌とビタミンE

ビタミンEは条件によっては発がんを促進する可能性があるようです。

ビタミンEのサプリメントを摂取しすぎた場合、前立腺癌の発症リスクが上昇した という研究もあります。

前立腺がんの基礎

しかし、食物からビタミンEを摂取することによる健康被害は報告されていません。

国立がん研究センターの講演でも、ビタミンEの過剰摂取が癌になりやすい生活習慣として述べられていました。

過剰摂取とは、サプリメントによる摂取のことです。

カナダの保健省もビタミンEのサプリメントによる健康被害を啓発しています。

ビタミンK

役割と作用

  • 血液凝固因子の生成促進

血液凝固因子のプロトロンビンが肝臓で生成される時に、ビタミンKは補酵素として働きます。ビタミンKは骨にあるオステオカルシンというタンパク質を活性化させ、カルシウムを骨に沈着させて骨の形成を促す作用があります。

癌とビタミンK

血液凝固因子を抑制すると、発癌が抑制されるという報告はあるものの、ビタミンKが発がんに影響を与える事を報告している論文はありません

癌に伴う血液凝固亢進

2017年に出された「Vitamin K and cancer」という論文ではっきり述べられていました。

  • Tew BY . Vitamin K epoxide reductase expression and prostate cancer risk. Urol Oncol. Mar;35(3). 2017.
  • Dahlberg S. Vitamin K and cancer. Scand J Clin Lab Invest. Dec;77(8):555-567.2017.




ビタミンB1

役割と作用

  • 糖代謝系(炭水化物の分解)酵素の補酵素

ビタミンB1は酵素たんぱく質として存在しており、消化管内で分解され、チアミンとなって空腸と回腸で吸収されます。小難しいですが、ビタミンB1は糖代謝の過程でピルビン酸からアセチルCoAに変わる時に必要となります。運動やトレーニングを行うと消費される、重要なビタミンです。

癌とビタミンB1

ビタミンB1は食道がんの発生リスクを低下させたという報告がありました。

また、胃癌術後にビタミンB1が低下するため、栄養サポートが必要です。

がんの手術と食事

  • Ma JL, Dietary vitamin B intake and the risk of esophageal cancer: a meta-analysis.
  • Cancer Manag Res. Nov 5;10:5395-5410. 2018.
  • Iwase K, Reduced thiamine (vitamin B1) levels following gastrectomy for gastric cancer. Gastric Cancer5(2):77-82. 2002.

ビタミンB2

役割と作用

  • 酸化過程の補酵素(ミトコンドリアの電子伝達系に作用)

ビタミンB2はリボフラビンという化合物です。小腸粘膜で加水分解され、小腸上皮細胞で吸収されます。吸収されたビタミンB2は代謝やエネルギー産生の補酵素として働きます。全身の細胞再生に関与しているため、発育のビタミンと言われます。

癌とビタミンB2

ビタミンB2は結腸直腸癌、乳癌のリスクを下げる可能性があります。

  • Liu Y, Vitamin B2 intake and the risk of colorectal cancer: a meta-analysis of observational studies. Asian Pac J Cancer Prev. 16(3):909-913. 2015.
  • Yu L. Dietary vitamin B2 intake and breast cancer risk: a systematic review and meta-analysis. Arch Gynecol Obstet. Mar;295(3):721-729. 2017

ビタミンB6

役割と作用

  • アミノ酸代謝・糖分解の補酵素
  • 赤血球ヘモグロビンの合成
  • 脂質代謝

癌とビタミンB6

ビタミンB6は適切に摂取すると胃腸癌の消化器癌のリスクを軽減させる可能性がある。

しかし、サプリメントによるビタミンB6の過剰摂取は、肺癌リスクを向上させる場合があるようです(特に喫煙歴のある男性)。

  • Mocellin S. Vitamin B6 and Cancer Risk: A Field Synopsis and Meta-Analysis.J Natl Cancer Inst. Mar 1;109(3):1-9. 2017.
  • Theofylaktopoulou D. Impaired functional vitamin B6 status is associated with increased risk of lung cancer. Int J Cancer. 142(12):2425-2434. 2018.

パントテン酸

役割と作用

  • 補酵素Aとして作用
  • 善玉コレステロールを増やす
  • ホルモンや抗体の産生

パントテン酸は細胞内に存在しており、食品として摂取されると消化管で消化され、体内へ吸収されます。

癌とパントテン酸(ビタミンB5)

関連する論文なし。

パントテン酸は体内のどこにでも存在するビタミンで、枯渇することもありません。

消費されてもすぐに補充されることから、研究が進まないのかもしれませんね。

ニコチン酸(ビタミンB3)

役割と作用

  • 酸化還元反応の補酵素として作用

ニコチン酸は、胃及び上部小腸より速やかに吸収されます。ナイアシンとも呼ばれます。

癌とニコチン酸(ビタミンB3)

ニコチン酸はコレステロールを下げる働きがあります。

また、皮膚がん、結腸癌の発生と再発を予防するという論文もあります。

  • Park SM et al. Niacin intake and risk of skin cancer in US women and men. Int J Cancer. 2017.
  • Singh N et al. Activation of Gpr109a, receptor for niacin and the commensal metabolite butyrate, suppresses colonic inflammation and carcinogenesis. Immunity. 2014.

葉酸

役割と作用

  • アミノ酸やDNAなどの生成・分解に関与
  • 赤血球の生産を助ける

葉酸は小腸で吸収され、補酵素として使用されます。

癌と葉酸

葉酸は正常細胞と癌細胞の両方に必要な代謝を担っています。

葉酸が不足すると、正常細胞が癌化するのか、癌細胞が細胞死するのか、分かっていません。

食事から必要量摂取することが大事のようです。

ビタミンB12

役割と作用

  • 糖新生・核酸代謝に関与
  • 赤血球の成熟
  • 神経の栄養

ビタミンB12はタンパク質と結合し、胃で分解されます。

神経障害(しびれ)の方にはビタミンB12の投与が効果的です。

癌とビタミンB12

ビタミンB12の高濃度投与は肺癌リスクを高めます

ビタミンB12と葉酸の補給は結腸、直腸癌のリスクを高めます。

胃全摘出後はビタミンB12欠乏となります。

  • Fanidi A. Is high vitamin B12 status a cause of lung cancer?. Int J Cancer. 145(6):1499-1503. 2019.
  • Oliai Araghi S. Folic Acid and Vitamin B12 Supplementation and the Risk of Cancer: Long-term Follow-up of the B Vitamins for the Prevention of Osteoporotic Fractures (B-PROOF) Trial.Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 28(2):275-282. 2019.
  • Lee SM. Methylmalonic Acid and Homocysteine as Indicators of Vitamin B12 Deficiency in Patients with Gastric Cancer after Gastrectomy. Nutrients. 21;11(2). 2019.

ビオチン

役割と作用

  • 酵素反応に関与する補酵素
  • 皮膚機能の保持

ビオチンはタンパク質と結合した状態で存在し、消化されて空腸から吸収されます。

主に、糖代謝、脂肪酸代謝、アミノ酸代謝の補酵素として関与しています。

癌とビオチン

ビオチンは増殖能の高い癌細胞にとって必要なビタミンです。

この特性を利用して、改変されたビオチンを輸送体として抗体を癌細胞まで運ぶドラッグデリバリーシステム(DDS)が注目されています。

また、ビオチンは放射線治療にも応用されています。

しかし、ビオチンの摂りすぎが癌を助長するという報告はないため、食事から摂取する分には影響ないと思われます。

ビタミンC

役割と作用

  • チロシンの分解、エピネフリン生成
  • 胆汁酸の生成
  • 鉄の吸収を促進
  • 生体内抗酸化作用

ビタミンCは酸化ストレスを発生させる活性酸素腫(ROS)を除去する抗酸化作用を持っています。ヒトでは生体内で生成することはできないので、食物から摂取する必要があります。

癌とビタミンC

癌に対する高濃度ビタミンC点滴療法が有名です。

ビタミンCのもつ抗酸化作用により、癌細胞の毒性を中和させるという考えです。

さらに、ビタミンCは癌の増殖遺伝子の抑制や癌細胞死を活性化することも示唆されています。

自由診療でされている先生のお話を聞いたことがありますが、その先生の経験上、癌が消えた人はいないが、副作用が軽減され、延命に繋がった症例はいるとの事でした。

高濃度ビタミンC点滴療法による副作用もあるので、医師に確認して下さいと言われていました。

  • 上瀧萌. ビタミンC点滴療法が癌細胞を死滅させるメカニズムの解明. 2013.
  • 大野智. 高濃度ビタミンC点滴療法.



がんとビタミンまとめ

ビタミンは脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンがあります。

ビタミンは身体の中で起こる様々な反応の補助として働いており、食物から摂取する必要があります。

ビタミンを点滴で投与する方法もありますが、過剰になると癌を引き起こす可能性が考えられており、医師の判断が必要です。

水様性ビタミンはサプリで摂取しても、ほとんどが尿として排出されている可能性があります。

高額なビタミン剤には注意が必要です。