がん治療には、副作用との付き合い方が大事です。
がん治療薬を使用した際に、一番最初に起こる副作用は、アレルギー反応です。
熱発、発赤、血圧低下、顔面蒼白などの症状が表れます。
それらを防ぐために、自分で行える事はあるのでしょうか。
がん治療後のアレルギー反応と、対策についてまとめました。
アレルギー反応と輸注反応
アレルギー反応
アレルギーとは
免疫反応により起こる急性症状を、アレルギー反応と呼びます。
ある物質(抗がん剤、花粉、ダニ、ハウスダスト、食べ物など)が体内に入ると、私たちの体は免疫反応を起こします。
もし有害な物質であれば、退治しなければなりません。
アレルギー反応は、これが過敏または不適切に起こる反応です。
免疫反応は、自分の体を守る反応ですが、過剰・過敏になったことで自分の細胞までも傷つけてしまうのです。
急性反応:数分~数十分で起こる反応
遅発反応:24時間~数日後に起こる反応
がん治療薬とアレルギー反応
抗がん剤で起こるアレルギー反応の大半は、薬剤自体か添加物に反応しておこる、急性反応です。
アレルギー反応のほとんどは初回投与時です。
抗がん剤で注意すべき薬剤
- タキサン製剤:タキソテール、ドセタキセル、パクリタキセル、アブラキサン
- プラチナ製剤:シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン
- リポソーム化ドキソルビシン
- エトポシド
- L-アスパラキナーゼ
- プレオマイシン
輸注反応(インフージョン・リアクション)
輸注反応とは
症状はアレルギー反応と同様ですが、従来の抗がん剤とは異なる分子標的薬で起こり、主に輸液中におこる事から、輸液反応と呼びます。
分子標的薬の使用で現れやすいです。
薬物投与中または投与開始後24時間以内に多く現れます。
症状は、アレルギー反応と似ています。
輸注反応の発生機序
その発生機序は明らかになっていませんが、議論されているのは、分子標的薬にマウスの異種タンパクが含まれている事や、腫瘍細胞の急速な破壊による炎症性サイトカインの放出による影響などです。
そのため、炎症性サイトカイン放出症候群とも呼ばれます。
輸注反応と分子標的治療薬
- リツキシマブ
- トラスツズマブ
- ベバシズマブ
アレルギーの予測
がん治療薬によるアレルギーは、投与してみないと分かりません。
しかし、予測することは可能です。
事前に薬剤や食べ物によるアレルギー歴があるか、必ず問診が行われます。
食べ物により起こしたアレルギー歴の問診はとても重要です。
例えば、牛肉や豚肉、カレイの卵にアレルギーのある方は、セツキシマブによるアナフィラシー症状がみられやすい事が明らかになっています。
アレルギーの対応
がん治療薬によるアレルギーが起こった場合は、まず、その治療薬を中止にします。
意識消失を伴うような、重度アレルギー反応(アナフィラキシー)の場合は、エピネフリンの投与が推奨されています。
気道の確保や輸液、下肢の挙上も行われます。
抗ヒスタミン薬は、軽度のアレルギー反応の場合は有効です。
ステロイドは、速効性に欠けるため、緊急時の対応としては向かないですが、遅発性のアレルギー反応を抑える事が期待されるため、投与する場合もあります。
事前の対策として、アレルギーが起こりやすい治療薬を投与する前には、抗ヒスタミン薬やステロイド薬を投与します。
アレルギーを抑える方法
結論から言いますと、体質改善や免疫機能を高める方法で、がん治療薬でおこるアレルギー反応を完全に抑えることは難しいです。
一番は、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を使用することです。
しかし、アレルギー反応は、体調により症状の程度が変わりますので、体調を整えることは重要です。
バランスの良い食事、十分な睡眠、ストレスの軽減など、生活習慣を整えるとアレルギー反応を多少なり抑えてくれます。
また、広義の免疫を高めておく事も、有効だと考えられます。
アレルギーまとめ
がん治療に伴うアレルギー症状には、免疫機能の亢進により起こるアレルギー反応と、抗原抗体反応により起こると考えられている輸注反応があります。
アレルギー反応は抗がん剤で起こりやすく、輸注反応は分子標的薬で起こりやすいです。
そのため、抗ヒスタミン薬の事前投与などが行われます。
また、普段から体調を整えておくことも有効です。