肺がん治療

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肺がんの治療は2000年代に入り、劇的に変化しています。

2000年代初めに分子標的薬が登場し、遺伝子検査に基づいた治療が始まりました。

2010年代には免疫チェックポイント阻害剤が保険適応となり、さらに生存率向上が見込まれています。

しかし、いずれも遺伝子検査で陽性でなければ効果は認められません。

肺がんのガイドラインにおいても遺伝子検査は推奨レベルであり、遺伝子検査を行わずに治療が行われている施設がないとも言えない状況です。(あくまで個人調べ)

どの種類の肺がんに、どの検査を行うと効果があるのか。まとめました。

肺がんの治療

肺癌は小細胞肺がんと非小細胞肺がんに分けられます。

肺がんの種類。小細胞がん、扁平上皮がん、腺がん、大細胞がん

小細胞肺がんは、早期から転移しやすいのが特徴です。小細胞がんの手術適応はⅠ期~ⅡA(リンパ節転移を伴わない)のみです。化学療法と放射線治療の感受性が高いため、可能な症例には化学放射線治療が行われます。

非小細胞肺がんはⅠ-ⅢA期では手術が適応となりますが、手術のみでは成績が十分ではないために、腫瘍サイズが2cm以上になると術後化学療法が行われます。(リンパ節転移の有無に関わらず)

化学放射線治療(CRT)は、遠隔転移がない(縦隔リンパ節転移はOK)症例が適応です。しかし、これには施設間で差があります。対側肺門転移は非適応となります。

遠隔転移がある場合、分子標的薬と免疫チェックポイント阻害剤治療が適応となります。進行した肺がんでは、4種類のPD-1/PD-L1阻害剤が患者さんに合せて使用されます。

*しかし、デュルパルマブだけは特殊で、4期だと保険適応外になります(2020.2.7現在)

進行肺がんに対するPD-1/PD-L1阻害剤

肺がんのPD-1/PD-L1阻害薬。ニボルマブ(PD-1抗体) ベムブロリズマブ(PD-1抗体) アテゾリズマブ(抗PD-1抗体) デュルパルマブ(抗PD-1抗体)

免疫チェックポイント阻害剤の効果

ニボルマブは2015年~、その他は2018年から保険適応となりました。

多くのデータはありませんが、免疫チェックポイント阻害剤は、遠隔転移のある進行肺がん患者さんでも15-20%に対して5年生存を達成しているとの報告があります。

また、一旦免疫チェックポイント阻害剤により免疫系へ良い影響を与えれば、一定期間その効果が持続する可能性があるようです。

肺がんステージ4であっても、延命ではなく治療を目的として行われるようになった事は、大きな変化です。

免疫の仕組み・免疫を高める方法

肺がんの分子標的薬

個別化した治療として行われるのが、分子標的薬です。EGFR遺伝子変異をもつがん患者さんにとても高い治療効果をもたらす上皮成長因子受容体・チロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI):ゲフィチニブ、エルロチニブがあります。

EGFR遺伝子変異は、この一つの遺伝子変異のみで発がん・増殖を来たす強力な因子です。肺がんの約半数はEGFR遺伝子変異が認められており、ゲフィチニブの効果が期待されます。特に非小細胞肺がん(腺がん、大細胞がん)に多いと言われます。

EGFR遺伝子変異の他には、ALK融合遺伝子変異があり、肺腺癌の5%ほどに存在しています。EGFR遺伝子変異とALK融合遺伝子変異を同時に起こすことは稀です。症例報告で、1件ありました。

EGFR阻害剤は、薬剤耐性が問題とされていました。

EFGR阻害剤を投与した症例の約半数は、1年以内に肺がんが増悪すると報告されています。その機序は、薬理学的問題や獲得耐性などの複数の要因が複雑に絡み合っている事がわかっています。

薬剤耐性に合せて、投与薬が変更されます。

肺がんの分子標的薬

副作用

EGFR阻害剤で注意したいのは、薬剤性肺障害です。

割合としては間質性肺炎が多いです。

薬剤性肺障害の発症リスク因子としては、喫煙歴、間質性肺炎がある、PS2以上(労働は困難)、55歳以上と言われています。

他に、皮膚障害や下痢、口内炎などもよく報告されています。

がん治療の副作用

遺伝子検査

非小細胞肺癌においては、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)の治療前に、EGFR遺伝子変異の測定を実施することが推奨されています。

検査方法は、気管支鏡(気管支の中をカメラで観察する)か喀痰細胞診(痰に癌が混在していないか検査)と同時に行われます。

保険適応のため、1回(または進行した時にもう1回)は保険診療で行われます。

ついでにPD-L1検査も行えば効率的ですが、どちらかの検査代が全額自費負担になることも。

肺がん治療まとめ

肺癌は小細胞肺がんと非小細胞肺がんに分けられ、非小細胞肺がんに対しては、EGFR遺伝子変異を約半数の肺がん患者に認めています。

EGFR遺伝子変異を検査することで、分子標的薬治療が行えます。

免疫チェックポイント阻害剤も肺がんと適応になるなど、肺癌の治療は進歩しています。

一方で副作用として間質性肺炎のリスクに注意が必要です。

*なお、肺がん治療に関しては主治医確認でお願いします!



参考文献

  • 前門戸 任. 進歩する肺がん治療:分子標的薬と免疫療法. 岩手医誌70(6). 2018.
  • 猶木 克彦. 肺癌治療の進歩、EGFR阻害剤を使いこなす. 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌23(3). 2013.
  • 福田 裕也. EGFR遺伝子変異とEML4-ALK融合遺伝子が同時陽性を示した肺腺癌の1例. 日呼吸誌6(5). 2017.