がんと有酸素運動

がんになると、積極的な運動を推奨されます。

今や、ダイエットに運動が必要なのと同じくらいの認知度ではないでしょうか。

運動には無酸素運動と有酸素運動があり、がんの運動療法は療法を組み合わせて行われます。

この記事では、有酸素運動を取り上げます。

有酸素運動

有酸素運動とは、比較的負荷量の弱いトレーニングを長時間かけて行う運動です。

例)ジョギング、ペダリングなど

有酸素運動の効果

一般的な効果

  • 筋細胞のミトコンドリアを増やす
  • 脂肪を燃焼させる(脂肪細胞、皮下脂肪、内臓脂肪)
  • 血液をサラサラにする
  • 糖を消費し、血糖値の上昇を抑える
  • 活性酸素を減らす etc…

がん症状への効果

  1. 下痢や貧血などの治療の副作用を軽減させる。
  2. 化学療法、放射線治療、ホルモン療法治療中の倦怠感を軽減させる。(特に前立腺がん、乳がん、肺がん、軽度造血器がん)
  3. 運動障害が苦痛症状の改善に有効である。
  4. 運動療法は睡眠障害や睡眠の質を改善させる。
  5. 運動は不安・抑うつを軽減させる。
参考文献
神里みどり. 運動療法. 日本緩和医療学会誌.

がんリハビリテーションの推奨

がんリハビリテーションの一つに運動療法があります。

がん患者さんに対する運動療法の推奨グレードを紹介します。

参考文献
古谷純朗. がんのリハビリテーションベストプラクティス. 金原出版株式会社.





有酸素運動の実際

有酸素運動の負荷量

有酸素運動の負荷量には、安静時心拍数を利用します。

まず、適切な運動強度(どの程度を負荷をかけるべきか)を決める為に、目標とする心拍数を求める必要があります。

それを目標心拍数と呼びます。

これを求める方法は、運動負荷試験を行うか、年齢から推測するか。です。

がん患者さんでは、心臓の病気がない限り年齢から推測します。

私たちは、がん患者さんの目標心拍数を設定する時に、カルボーネン法を使っています。

カルボーネン法

運動プログラム立案

例)50歳女性、安静時心拍数64回、運動強度40%とします。

上記のカルボーネン法にあてはめた場合、目標心拍数は82回/分となります。

運動プログラム立案

例)50歳女性、安静時心拍数64回、運動強度40%とします。

上記のカルボーネン法にあてはめた場合、目標心拍数は82回/分となります。

カルボーネン法で目標心拍数を求めたら、運動の方法を選択します。

手軽にできる有酸素運動は、ジョギング、自転車、エルゴメーターなどです。

ポーツジムや市民施設を利用する場合、ほぼ100%自転車エルゴメーターはおいてあります。

そちらを利用されると良いです。ここでは、自転車エルゴメーターを例に挙げて説明します。

自転車エルゴ

 <運動プログラム>

  1.  ウォームアップ(準備運動)5-10分
  2. 有酸素運動 10-20分
  3. クールダウン 5-10分
  • 週3回以上実施

ウォームアップ10分間で目標心拍数まで上昇するように促します。

ウォームアップで82回/分までペダルをこいで心拍数を上昇させ、10-20分維持します。これがきつい。

その後クールダウンとして軽くペダルを回しながら、心拍数を64回まで戻していきましょう。

*がんの方の場合、抗がん剤や放射線といった副作用により、気力、体力が低下しています。そのため、有酸素運動の理想とする60%の運動強度で運動を最初から行える方はいません。そのため、運動強度は40%から始めるようにしています。時間も有酸素運動20分以上が理想ですが、はじめから20分以上の運動は難しいです。ウォームアップとクールダウン合せて20分から開始し、日に日に時間と強度を上げていくようにしています。最初から無理な負荷をかけると、運動への意欲もなくなり、続きません。

有酸素運動の注意点

  • がん治療中や治療後24時間以内で体調が優れない時は行わない
  • 重篤な貧血がある時は、改善して行う
  • 白血球が減少している時は、公共施設での運動は避ける
  • 放射線治療をされている方は、塩素を含むプールは使用しない
  • 骨転移の有無を把握する
  • β遮断薬を服用している場合は、運動耐容能が低下する場合があるので、脈拍の減少や運動能に注意しましょう。

*β遮断薬は高血圧治療薬です。心拍数上昇を抑える作用があります。

有酸素運動のエネルギー代謝

酸素=エネルギーと勘違いされがちです。酸素がないと生きられないのは間違いないですが、酸素からはエネルギーを産生できません。(車でいうガソリンではない)

体内に貯蔵された糖質や脂質を酸素によって燃焼し、二酸化炭素と水に分解する時に発生するエネルギーが利用されます。

運動初期の約1分間の筋活動は酸素が使われません。糖質と脂質を酸素によって燃焼すると述べましたが、短時間の運動では糖質が、長時間の運動では脂質が使われます。

有酸素運動はダイエットに効果がありますが、皮下脂肪や内臓脂肪の燃焼には20分以上の運動が必要です。


がんと有酸素運動まとめ

がん治療患者の有酸素運動はとても推奨されています。

がん治療における副作用の軽減、抑うつや不安の軽減効果が得られます。

有酸素運動は週3回、1回30分以上の運動を続けると、12週後に効果が表れる事が一般的ですので、運動の継続が必要です。

運動負荷量の設定は、カルボーネン法で行うことを推奨します。