乳がん患者の約6割は、女性ホルモンが原因と言われています。
女性ホルモンは、エストロゲンとプロゲステロンがあります。
ホルモン療法は主にエストロゲンを抑制する治療になりますが、副作用の体重増加に苦しむ患者さんが多いです。
ホルモン療法で抑制する女性ホルモンと、ホルモン療法の種類、体重増加のメカニズムをまとめました。
ホルモンと体重増加
女性ホルモン
一生でスプーン1杯にも満たない女性ホルモンですが、女性はホルモンに支配されています。
女性ホルモンは、視床下部が中枢です。
女性ホルモンの揺らぎによって、気分、食欲、精神、活動が変化します。男性には理解できない気分の浮き沈みも、女性ホルモンの影響です。
エストロゲン分泌(卵胞ホルモン)が増えると、食欲抑制と体脂肪燃焼、エネルギー消費の増加を起こします。キラキラ期と呼ばれる、女性の気分が一番良い時期は、エストロゲンの分泌が高まる時期と重なる事が、図から分かります。
反対にプロゲステロン分泌(黄体ホルモン)が増えると、気持ちが不安定になり、食欲が増して、体重も増えやすいです。
ホルモン療法の薬剤
アロマターゼ阻害剤
- アリミデックス錠(アナストロゾール)
- フェマーラ錠(レトロゾール)
- アロマシン錠(エキセメスタン)
閉経後の乳がん患者に適応。閉経後は卵巣のエストロゲン合成能が低下する変わりに、脂肪細胞の「アロマターゼ」が、副腎から少量分泌されているアンドロゲン(男性ホルモン)をエストロゲンに変換し、乳がん細胞を活性化します。
アロマターゼ阻害剤は、脂肪細胞のアロマターゼを阻害することで、乳がんん進行を抑える薬になります。
なので、閉経前の乳がん患者さんへ投与されることはありません。
プロゲステロン製剤(黄体ホルモン剤)
- メドロキシプロゲステロン(ヒスロンH)
乳がん初期または転移性乳がんに使用される。
DNA合成抑制や、下垂体・副腎・性腺系への抑制作用により、関節的に女性ホルモンの働きを抑制する
抗エストロゲン剤
- タモキシフェン製剤(ノルバデックス)
- トレミフェン製剤(フェアストン)
- フルベストラント製剤(フェソロデックス)←閉経後
閉経前・閉経後に使用される。
乳がん細胞の増殖を増やすエストロゲンの分泌を阻害する。
LH-RHアゴニスト
- ゴセレリン製剤(ゾラデックス)
- リュープロレリン製剤(リュープリン)
LH-RHアゴニストはLH-RHと似た物質であり、下垂体LH-RH受容体のアゴニストとして作用する。
そのため、初回投与時には性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)の分泌が増大する。
しかし、継続的に投与することでLH-RH受容体のダウン・レギュレーションが起こり、受容体の数が減ってしまう。
これによって、下垂体からの性腺刺激ホルモンの分泌量が低下する。
ホルモン治療を行うと食欲が増進するメカニズム
エストロゲンは、レプチン*と同様に食欲を抑制し、体脂肪量の低下と、エネルギー消費量を上昇させます。
ホルモン療法によるエストロゲンの低下は、食欲増進、活動量低下、脂肪吸収増加を引き起こします。
エストロゲンは視床下部から放出されるLH-RH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)に支配されており、ホルモン治療によるエストロゲン低下は、視床下部へ影響を与えてしまいます。(ホルモンの血中濃度フィードバックを介して)。
自律神経の乱れは、消化器系へ影響を及ぼすので、間接的に食欲を乱すとも考えられます。
脂肪細胞から分泌されるホルモンで、視床下部に働きかけて食欲を抑制したり、脂肪の燃焼を促す役割があります。しかし、睡眠不足や自律神経の乱れにより、レプチン量が少なくなります。
体重減少(ダイエット)の方法
世のダイエットの基本はカロリー制限です。食べる量(摂取カロリー)を減らし、いかに活動(消費カロリー)できるかが、王道です。
基礎代謝量を上げるために、筋トレに励む方もいます。
しかし、ホルモン治療患者はそれだけでは不十分です。
先にも述べたように、食欲増進は、薬剤性ホルモン異常により引き起こされており、食欲中枢の問題です。
人間の根幹へアプローチできなければ、食欲増進を抑えることは困難だと考えています。
ホルモン療法による食欲増進は、自律神経を整える事で抑制できる可能性があります。
また、女性ホルモンに影響を与える事なく食欲減退を図る手段として、漢方薬の使用(防風通聖散)も期待できます。
防風通聖散
漢方薬です。防風通聖散には、18種類の生薬が配合されており、それぞれの相互作用が相まって、抗肥満効果を発揮します。
防風通聖散は、脂肪の燃焼とグレリン(食欲中枢を刺激するホルモン )の分泌を促進することで、図のようなダイエット効果を表します。
自律神経を整える
ツボ押し
自律神経は、副交感神経と交感神経に分けられますが、副交感神経を整える方が良いです。副交感神経を整えるツボ、方法を、鍼灸師へ聞きました。
生活習慣
- 睡眠のリズムを整える
- 朝から太陽を浴びる
- 朝食を必ず同じ時間に食べる
- 就寝2時間前に入浴をする
自律神経については、後日別の記事で述べます。お待ちください!
まとめ
エストロゲンが原因の乳がん患者は約6割です。
エストロゲンは、食欲抑制作用があるため、ホルモン療法によるエストロゲン分泌減少は、体重増加の要因となります。
エストロゲン分泌減少により、自律神経の乱れを引き起こすので、自律神経を整える事で、食欲減退が期待されます。