がん治療による有害事象は、体液バランスを崩し、全身または下肢の浮腫みを生じます。
浮腫み治療には、まず利尿薬が選択されるため、多くのがん患者が利尿薬を服用しています。
利尿薬は水分の再吸収を阻害するため、浮腫み改善に有効ですが、副作用にも注意が必要です。
服用されるご自身で副作用を把握することが、リスク軽減に繋がると考えていますので、利尿薬についてまとめました。
利尿薬
サイアザイド系利尿薬
一般名・商品名
ヒドロクロロチアジド・ヒドロクロロチアジド
トリクロルメチアジド・フルイトラン
インンダパミド・ナトリックス
作用機序
遠位尿細管にてNa+/Cl-共輸送体を阻害します。さらに、Na+の再吸収を抑制します。
ループ利尿薬
一般名・商品名
フロセミド・ラシックス
アゼセミド・ダイアート
トラセミド・ルプラック
作用機序
ヘンレ系蹄上行脚のNa+/K+/2Cl-共輸送体を阻害します。さらに、Na+、K+吸収を抑制します。
カリウム保持性利尿薬
一般名・商品名
スプロノラクトン・アルダクトン
エプレレノン・セララ
エサミセレノン・ミネブロ
作用機序
遠位尿細管、集合管のNaチャネルを抑制、またはアルデステロンを抑制します。さらに、Na+再吸収抑制と、K+排泄を抑制します。
バソプレシン拮抗薬
一般名・商品名
トルパプタン・サムスカ
作用機序
集合管での水分の再吸収を抑制します。集合管での水分再吸収にはバソプレシンV2受容体が関与しており、これを阻害することで再吸収を抑制します。
利尿薬の作動時間
利尿薬の副作用
低カリウム血症(血清カリウム濃度が3mEq/L未満)
- 低血圧
- けいれん
- 筋肉のこわばり
- 腸閉塞など
低ナトリウム血症
- 意識レベル低下、めまい
- 倦怠感
- 頭痛、吐気
- けいれん
脱水
- 意識レベル低下
- 口の渇き
- 皮膚の乾燥出現
多臓器不全
気付いた時には手遅れになることも。上記の副作用の末期症状ですので、まずは低カリウム血症や脱水を予防して下さい。
利尿薬の使い分け
以上の利尿薬を用いても利尿できない場合、最終手段としてバソプレシン拮抗阻害薬が登場します。
利尿薬の組み合わせは、主治医によって好みがあります。ある程度のセオリーはありますが、詳しくは主治医確認が必要です。
患者さん自身で気をつけて欲しい事
利尿薬を服用されている患者さんは多いです。
がん疾患の場合、多くの原因で全身または下肢の浮腫が出現します。
まず最初に行われる対策が、利尿薬になります。
利尿薬は速効性(ループ系)があり、脱水や低カリウム血症の副作用が出現しますので、服用される際は自身での管理も必要です。
尿量や尿の回数を把握されて下さい。
また、血液データの確認も行ってください。
基本は主治医が確認していますが、連休や休院期間が長くなると、脱水に気付かずに利尿薬を服用し続けた場合、多臓器不全に繋がりかねません(これは最悪のケースです)。
上記に乗せている低カリウム血症や脱水の症状を知っておくと、身体のサインにいち早く気づく事が出来ます。
利尿薬まとめ
がん患者さんの多くは利尿薬を使用する機会が多いです。
そのため、副作用を自身で理解して欲しいと思います。
利尿薬は水の再吸収を阻害する薬剤であり、全身浮腫の軽減を目的として処方されます。
速効性のあるループ系利尿薬や、強力なバソプレシン拮抗薬など様々です。
主治医により併用方法などが異なりますが、副作用が起こった際の身体のサインに気付く事が重要です。
正木 崇生. 浮腫の診断と利尿薬の使い方. ドクターサロン60巻(8). 2016.