がん治療と筋肉

私は理学療法士の視点から、がん治療患者さんの筋肉量に向きあっています。

がん治療患者さんは、様々な理由で筋肉が減少しやすい状態です。

筋肉量が減少すると、日常生活に支障をきたすことは元より、手術や抗がん剤の効果、免疫チェックポイント阻害剤の効果にも影響を及ぼす事が報告されています。

筋力を後回しにせず、薬物治療と並行して筋肉を保つ事が重要です。

今回は、がん治療と筋肉の関係についてお話しします。

治療開始時点で筋肉量低下を認める場合、抗PD-1抗体の治療効果が有意に低下した

  • 大阪大学医学部附属病院の白山敬之特任助教らの研究グループは、肺がん患者さんに対する抗PD-1抗体の治療結果と、その患者さんの筋肉量の関係を、後ろ向きの観察研究として行った。
  • 治療開始時点で筋肉量の低下を認める患者群では、筋肉量低下を認めない患者群と比較して、抗PD-1抗体治療中の病勢進行のリスクが2.83倍となることが示された。
  • また、全身状態が良好な患者さんの中でも、筋肉量の低下の有無で治療成績に同様の差がみられた。
  • さらに数例だが、1 年以上の長期効果を認めた患者さんは、男女ともに筋肉量が高い集団であることが示唆された。(翻訳より抜粋)

抗PD-1抗体とは、免疫チェックポイント阻害剤の一つで、商品名はキイトルーダが有名です。第4の治療と言われる免疫チェックポイント阻害剤が大きな治療の選択肢となってきますが、そこにも筋肉量の維持がポイントになります。

ふくらはぎや太ももには大きい筋肉がありますが、ここの筋肉は全身に血液を回すためのポンプ作用を担っています。第二の心臓とも呼ばれます。この筋肉が減少したら、投与した薬剤をターゲットの腫瘍まで運ぶ量が減ってしまいます。

また、筋肉細胞から放出される”マイオカイン”と呼ばれる免疫サイトカインも減ってしまうため、体調も崩しやすいのです。

・参考文献
Takayuki Shiroyama et al. Impact of sarcopenia in patients with advanced non–small cell lung cancer treated with PD-1 inhibitors: A preliminary retrospective study.Scientific Reports9(1),2019.

週2-3回の筋力トレーニングをすると、がんによる死亡率が31%減少していた

  • 1994-2008年の30歳以上の8万人を対象に、筋力トレーニングプログラム:SPE(自重トレまたはジムトレ)の効果を調査した。
  • SPEは、月8-14回行われ、死亡率との因果関係を調べた所、がん疾患のリスクを31%軽減していた。
  • 有酸素運動のがんリスクは明らかにされていたが、筋トレによるリスク軽減は初めての報告であった。

週2-3回の筋トレを習慣化する事は難しいですが、筋肉を保つ事が重要なのは理解できるかと思います。考察の中で、筋トレは性ホルモンの乱れを改善させ、前立腺癌や子宮体癌のリスクを軽減させる事や、抗がん剤と闘うための強力な補助療法であると述べられています。

参考文献
Does Strength-Promoting Exercise Confer Unique Health Benefits? A Pooled Analysis of Data on 11 Population Cohorts With All-Cause, Cancer, and Cardiovascular Mortality Endpoints. American Journal of Epidemiology, Volume 187,pp1102–1112,2018.

術後の筋力減少は、日常生活の回復に影響を与える

消化器系がんの手術後は食事制限が行われるため、全身の栄養状態が不良になる。そのため、筋肉量の減少が起こります。筋肉量が減少していると、術後合併症のリスクが高くなるだけでなく、再発のリスクも高くなるという報告もあります。

なるべく術後の筋肉減少を起こさないために、術後リハビリが早期に行われます。しかしながら、術前に筋力が落ちている患者さんは、術後の日常生活の復帰が遅くなることを体験しています。活力、気力までも落ちてしまい、術後抗がん剤の副作用に耐えれない方も居ます。

がんと診断された時から、筋肉を落とさない栄養・運動の意識が必要だと感じています。

・参考文献
海道利実ら. がん治療とサルコペニア. 日本静脈経腸栄養学会雑誌 3(1 2 ):822-828:2017.

筋肉量を落とさないために

1. キャン・エク!(がん治療中でも出来るエクササイズ)を試みる

がん治療に配慮したトレーニングを考案しました。負担なくできるストレッチやエクササイズとなっています。

2. リハテインWPIを試みる

筋肉減少の予防には、運動だけでは足りません。たんぱく質が大事です。しかし、食事で1日体重×1.0-1.5gのたんぱく質を摂るのは容易ではありません。手軽に多くのたんぱく質を摂取できる人工添加物不使用のプロテインを監修しました。たんぱく質の補給にお試しください。

がん悪液質は筋肉量を減少させますが、その予防にホエイプロテインは有効だと考えられます。その機序は、筋肉異化作用の抑制、栄養状態の改善、一部免疫機能向上を結論とする論文がありました。体重減少を感じたら、悪液質への移行を遅らせるためにホエイプロテインを摂取することをおススメします。

3. 毎日体重を測る

筋肉が減少すると、体重が落ちてきます。がんに伴う筋肉減少は、体重減少がセットで起こります。体重が短期間に2kg減少していないか、確認して下さい。

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